◇ 司縣遼太郎氏の名作に
「坂の上の雲」がある。
明治維新から日媒戦争の時代の
日本人の意気込みを、
見事に描いた作品であった。
あの時代、
人々の視線の先には、
ロマンがあり、夢があった。
そして目の前の坂の上には、
見上げる「雲」があった。
◇ この小説の題名にあやかって
元東京杉並区立和田中の
民間校長だった藤原和博氏が
「坂の上の坂」という本を出した。
明治の「坂の上の雲」の時代は、
寿命が50年の時代である。
子ども時代をゆったりと過ごして
一人前になり、
兵役を果たすなり、
家業を継ぐなりして、
夢中で一生懸命に仕事をしていたら
隠居の時期を迎え、
やがて死に至った。
言ってみれば
「雲」を眺めたまま走り続けたら、
余計なことを考える必要もなく、
あっさりと死を迎えることができた。
だから坂の上に雲を
見ていればそれで良かったのだが、
平均寿命が80年代なった
いまの時代においては、
「一つの坂を登りきったら、
もう一つそこに坂がある」という
そのような意味である。
◇ 60歳から65歳で
仕事をリタイアしても、
死ぬまでの時間は
まだまだ相当ある。
このあたりで
人生は終わらないのである。
つまり「坂の上の雲」の
あの時代に比べて、
人生が圧倒的に延びたことになる。
◇ 最初の坂は個人の
若さのエネルギーで登ってきたが、
二つ目の坂は、
智慧と経験と協調性で
登っていくしかない。
とすると、
坂の上にあるのは、
「坂の上のあの時代のような、
ぽんやりとした「雲」では、
もはやないのではないか」
待ち構えているのは、
実は「雲」ではなく、
次ぎの新たなる 「坂」
なのではないかと、
作者は言いたかったのでは
なかろうか。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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