坂の上の坂①  vol.1104

◇ 司縣遼太郎氏の名作に

 「坂の上の雲」がある。

 明治維新から日媒戦争の時代の

 日本人の意気込みを、

 見事に描いた作品であった。

 あの時代、

 人々の視線の先には、

 ロマンがあり、夢があった。

そして目の前の坂の上には、

見上げる「雲」があった。

◇ この小説の題名にあやかって

 元東京杉並区立和田中の

 民間校長だった藤原和博氏が

 「坂の上の坂」という本を出した。

 明治の「坂の上の雲」の時代は、

 寿命が50年の時代である。

子ども時代をゆったりと過ごして

一人前になり、

兵役を果たすなり、

家業を継ぐなりして、

夢中で一生懸命に仕事をしていたら

隠居の時期を迎え、

やがて死に至った。

言ってみれば

「雲」を眺めたまま走り続けたら、

余計なことを考える必要もなく、

あっさりと死を迎えることができた。

だから坂の上に雲を

見ていればそれで良かったのだが、

平均寿命が80年代なった

いまの時代においては、

 

「一つの坂を登りきったら、

 もう一つそこに坂がある」という

 

そのような意味である。

 

◇ 60歳から65歳で

 仕事をリタイアしても、

 死ぬまでの時間は

 まだまだ相当ある。

このあたりで

人生は終わらないのである。

つまり「坂の上の雲」

あの時代に比べて、

人生が圧倒的に延びたことになる。

◇ 最初の坂は個人の

 若さのエネルギーで登ってきたが、

 二つ目の坂は、

 智慧経験協調性

 登っていくしかない。

とすると、

坂の上にあるのは、

「坂の上のあの時代のような、

 ぽんやりとした「雲」では、

 もはやないのではないか」

待ち構えているのは、

実は「雲」ではなく、

次ぎの新たなる 「坂」

なのではないかと、

 

作者は言いたかったのでは

なかろうか。

        つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください