【タモリの弔辞】
あなたは私の父のようであり、
兄のようであり、
そして時折みせる
あの底抜けに無邪気な笑顔は
はるか年下の弟のようでもありました。
あなたは生活すべてがギャグでした。
たこちゃん(たこ八郎さん)の
葬儀のときに、
大きく笑いながらも
目からぼろぼろと涙がこぼれ落ち、
出棺のときたこちゃんの額を
ピシャリと叩いては、
『このやろう逝きやがった』と
また高笑いしながら、
大きな涙を流してました。
あなたはギャグによって
物事を動かしていったのです。
あなたの考えは、
すべての出来事、存在を、
あるがままに、前向きに肯定し、
受け入れることです。
それによって人間は
重苦しい陰の世界から解放され、
軽やかになり、
また時間は、
前後関係を断ち放たれて、
その時その場が
異様に明るく感じられます。
この考えをあなたは見事に
一言で言い表しています。
すなわち
『これでいいのだ』と。
あなたは今この会場の
どこか片隅に、
ちょっと高いところから、
あぐらをかいて、肘をつき、
ニコニコと
眺めていることでしょう。
そして私に、
『お前もお笑いやってるなら、
弔辞で笑わせてみろ』と
言っているに違いありません。
あなたにとって、
死も一つのギャグなのかもしれません。
私は人生で初めて読む弔辞が
あなたへのものとは
夢想だにしませんでした。
私はあなたに生前お世話になりながら、
一言もお礼を言ったことがありません。
それは肉親以上の関係である
あなたとの間に、
お礼を言うときに漂う
他人行儀な雰囲気が
たまらなかったのです。
あなたも同じ考えだということを、
他人を通じて知りました。
しかし、
今お礼を言わさせていただきます。
赤塚先生 !
本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
私もあなたの数多くの作品の一つです。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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