コンピューターが計算したあなたの余命カルテ ① vol.631

 

「次の人生を歩みましょうか」

    医師は重い病を抱えた患者の枕元で、

    穏やかな口調で語った。

 

手元のタブレット型端末で

呼び出した電子カルテ。

 

1カ月後の生存確率は33%

 

コンピューターがはじいた

余命が記されていた。

 

「次の人生は、もう治療はいらない」

 

患者は仕事を部下へ引き継ぎ、

娘は病棟でささやかな結婚式を挙げた……

 

◇ 遠い未来の話ではない。

 

緩和ケアの専門家である

筑波大学の浜野淳講師は、

 

「自らの最期を知り、

  残り少ない人生を充実させたいと

 思う患者の望みにこたえたい」

 

と話した。

 

◇ すでに技術はある。

 

   進行がんの患者約1000人の

   データを調べ、

 

血液成分や心拍数などの

検査値のパターンが、

 

1週間~3カ月先の生存確率を

暗示していることに気づいた。

 

◇ 研究を積み重ね、

   人生の締めくくりを迎える時期を

   予測する方程式を導いた。

 

日々の検査結果を

コンピューターに入力するだけで、

 

健在である確率を1週間先ならば

8割の精度で判定する。

 

◇ コンピューターや人工知能(AI)が進歩し、

   未来を高い確率で予言できる時代が

   到来しつつある。

 

数ある予測のなかで

「自分がいつまで生きられるのか」は、

最大の関心事だ。

 

医療関係者によると、

命の炎が燃え尽きようとしていても、

 

医師は余命を長めに

伝える傾向にあるという。

 

◇ 遺族からは、

 

「人生が残りわずかとわかっていたら、

   治療の負担をなくし好きなように

   過ごしてもらいたかった」

 

との声もあがる。

 

治療を続けるか、

積極的な治療を控える

緩和ケアに切り替えるか、

その判断は人には難しい場面もある。

 

◇ 告知の是非はともかく、

    死期を察する予測技術の研究が

    絶えないのはこのためだ。

 

世界でもここ20年、

さまざまな予測手法が検討されてきた。

 

米国では、患者の診断内容を入力すると

余命が示される医師向けのサイトが

すでに公開されているという。

 

将来について知りたいとの願いは、

古今東西に共通する。

 

◇ 古代ギリシャでは、

   疫病の流行や戦況を占ってもらおうと

   多くの人が神殿を訪れ、

 

    巫女(みこ)が伝える神の

     お告げに耳を傾けた。

 

現代でも、沖縄や奄美群島には

ユタと呼ばれる民間霊媒師が実在しており、

 

霊的問題のアドバイス、

解決を生業としている。

 

こうした予言の多くは

「運命」や「宿命」と受け止められた。

 

その時をどう迎えるかが大切で、

あらがうものではなかった。

                               つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

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