◇ 鎌倉時代のはじめに
「平安物語 」と「方丈記」が完成した。
この二つの書き出しは、よく似ている。
すべてのものは、時とともに移りゆく。
すなわち諸行無常である。
行く川の流れは絶えずして、
しかも、もとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、
かつ消え、かつ結びて、
久しくとどまりたる例(ためし)なし。
世の中にある、人と栖(すみか)と、
またかくのごとし。
方丈記
◇ 鴨川は現代のいまでも
京都の街を流れている。
でも流れている水は常に違う。
つまり鴨川という名称や概念は
時間の中で止まっているのだが、
そこに流れている水は常に入れかわる。
「世の中にある、人と栖と、
またかくのごとし」
人も街も 移りゆき、入れかわる。
いずれトンビも世の中から消えていき、
あなたも消えていく。
それが世の中なのだと。
現代医学では、われわれの身体は、
7年で物質的には、完全に入れかわるという。
鴨長明は、むろんそんなことは知らない。
でも800年前にその本質を知っていた。
◇ 平家物語の冒頭のくだりは、
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
祇園精舎は、古代インドのお寺である。
そこには無常堂というお寺がある。
お坊さんが死を迎える時になると、
この無常堂に移される。
現代版のホスピスである。
無常堂の四隅には、
玻璃(はり)の鐘が下げられている。
玻璃: ガラスまたは水晶
臨終になると、
このお鐘がひとりでに鳴り出す。
諸行無常、是生滅法、
生滅滅己、寂滅為楽 と
鐘の音はいつも同じである。
ではなぜ諸行無常なのか、
それは、聴く人の気持ちが
変わるからであろう。
人の気持ちも諸行無常である。
今日一日の人生を大切に!
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