チョウチンアンコウの亭主の悲哀 ①   vol.267

 

◇ チョウチンアンコウという魚がいる。

 

 アンコウの一種である。

 

 深い海の底の真っ暗なところに住んでいる。

 

真っ暗なところを泳いでいくので

この魚は提灯を持っている。

 

すなわち頭のさきから

長い鞭のようなものが生えていて、

それが光を放つのである。

 

 

◇ 先日、テレビを見ていたら

  Red Bull の CM が始まり、

 

そこに偶然にもチョウチンアンコウの

アニメの映像が映し出された。

 

そしてそのチョウチンアンコウが

 

      低い男性の声 

 

「暇だなあ〜」 と つぶやいたのだ。

 

  アレ〜?           アレ〜?

 

電通か博報堂か、知らないけれど、

このCMは致命的なミスを犯していることを

トンビは見逃さなかった。

 

 

そもそも提灯を持っている

デカイ図体の魚、

 

あれは メス なのである。

 

あまりにもグロテスクで、

間違えるのも無理ないが、

 

これが人間だったら「性別詐称」

訴えられるかもしれない。

 

このCMを見ながら、

チョウチンアンコウについて

ふと、むかしの記憶が甦ってきた。

 

かれこれ10年以上まえに読んだ

本に書いてあったことだ。

 

なんでかわからないが、

最近、むかしのことをよく思い出す。

 

本のタイトルは完全に忘れたが、

 

あまりにも哀れな内容だったので

いまでも鮮明に覚えている。

 

 

◇ アンコウの提灯はもちろん

 自分の泳ぐ道を照らすためにあるが、

 同時に餌となる小動物をおびき寄せる

 手段にもなっている。

 

ただし、 オスは提灯を持たない。

 

大きさもメスの十分の一である。

 

メスは 40㎝ぐらいだが、オスはたったの 4㎝。

 

あの提灯をぶらさげた壮大なメス魚の、

亭主にあたる魚とはとても思えない。

 

このメスに対して、この小さな平凡なオスが

どういう具合で亭主たる存在になるのかというと、

 

彼は、ただじっとその機会を

待っているだけなのである。

 

そして偶然に雌が自分に近づいてくると、

このチャンスを絶対に逃さないというばかりに、

 

彼は雌の背中であろうが、

頭であろうが、腹であろうが、

 

ところかまわずにいきなり唇で

吸いつくのである。

 

吸いついたら、それきりである。

 

どんなことがあっても離れない。

 

メスが泳ぐままに、ぶら下がって動く。

 

 

そしてここで

世にも変わったことが起こるのである。

              つづく

 

今日一日の人生を大切に!

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