◇ ガンは多くの場合、
細胞が新しいものに置き換わるときに、
遺伝子のコピーに失敗することで起こる。
ということは、
細胞の数が多い大きな動物ほど、
ガンになりやすいはずだが、
ゾウさんはほとんどガンにならない。
その謎を解く新たな手がかりを
明らかにした論文が、
2018年8月に学術誌
「Cell Reports」に掲載された。
鍵となるのはゾウさんの進化の過程で
復活を果たした「ゾンビ」遺伝子だという。
◇ 生物の大きさとガンになる確率が
一致しない現象は、
「ペトのパラドックス」と呼ばれている。
2015年、シフマン氏の研究グループは、
このパラドックスにまつわる
重要な発見を発表した。
彼らが突き止めたのは、
ゾウさんにはガンを抑制する
P53という遺伝子が多いということだった。
人間の遺伝子には1組しか存在しないP53 が、
ゾウさんにはなんと20組も存在していた。
動物の細胞が分裂するとき、
P53は遺伝子の良否を診断する
医者のような役割を担う。
この点は、人間でも、ゾウでも、
他の動物でも変わらない。
P53は、DNAが破損しているか
どうかを見分け、どうするかを決める。
軽度な問題を抱えた細胞なら修復できるが、
破損の度合いが大きい場合は、
細胞がガン化するリスクがあるため
P53はその細胞を殺すよう命じるという。
今回の論文の著者である米シカゴ大学の
進化生物学者ビンセント・リンチ氏によれば、
ほとんどの動物では細胞を
修復する方法がとられるが、
ゾウでは細胞を殺すケースが多いという。
そこでリンチ氏は、
理由を突き止めたいと考えた。
氏は当時、
並行してゾウさんのP53遺伝子を
研究するチームも率いていた。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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