◇ 医療現場の技術革新が
ディスラプション(創造的破壊)を
引き起こした。
未来がわかりさえすれば、
運命は変えられる。
こんな期待が漂い始めた。
人類は長い歴史の中で
感染症などを克服し、
確かな記録が残るここ約300年で
平均寿命は40歳弱から80歳超まで延びた。
天寿を全うするうえで、
寿命が長くなるほど、
将来がいっそう気にかかる。
◇ どのような遺伝情報の人が
どんな暮らしを送ると、
どれだけの病気になってしまうのか。
病気の前兆は、
いつごろどんなふうに表れるのか。
今後に備えるための疑問はいくらでもある。
あらゆるデータを突き合わせ、
人類の未来をたぐり寄せる
壮大な謎解きが進行中だ。
◇ 人体は複雑だ。
2000年代初めにヒトの
ゲノムが解読されたが、
「特定の遺伝子の異常だけでは
病気の説明はつかない。
特定の遺伝子を最先端技術で
修正しただけで病気が治るとは限らない」
(東北大教授)
生活習慣や環境も体に
じわじわと影響を与えていく。
◇ 計画では、遺伝情報や
生活習慣と病気の関係に迫る
連立方程式を突き止め、
健やかな人生を送るための
鉄則を見つける。
そうでなくとも、
病魔を座して待つのではなく、
先手を打って生活習慣を変えたり
早めに治療を始めたりして、
闘病生活とは別の人生を選べるようにする。
未来を変えるのだ。
祖父母の世代には間に合わずとも
今後生まれるであろう
4世代目以降もデータを集め、
世代を越えて健康管理に
役立てていくことも可能だ。
これから予測技術が
社会のあちこちに普及し、
その精度は格段に高まる。
先回りしてわかる未来を
人類はどう受け止めればよいのだろうか。
「あとどれくらい生きられるのか」
筑波大の講師は生存確率の
数字をはじいた後、
頭を抱えてしまった。
「患者や家族に正直に知らせるべきか。
伝えられて幸せになれるのか」
研究成果は出たが、
新たな苦しみが始まった。
悩んだ末に至った結論は、
「生存確率そのものは
患者や家族に告げるべきではない。
最期まで充実した時を
過ごしてもらうために
自分たちはやれることをやる」
先を見通せる時代だからこそ、
私たちは決して生き急がず、
いまをいかに大切に生きていけるかが
問われている。 つづく
今日一日の人生を大切に!
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