フランク・シナトラのスパイシー・ハイボール   vol.794

素敵なバーに、

 18歳になったばかりの倅を連れて、

 フランク・シナトラがやってきた。

 

「今日からお前を大人として

 扱ってやるから、

 タキシードを着てバーに来たんだ」

 

そういうわけで、シナトラは、

馴染みのバーカウンターに倅と座った。

 

「タリスカーのストレートと水を、

    別々のグラスにして頼む」

 

   シナトラは言った。

 

怪訝な顔をしているバーマンを尻目に、

彼はポケットからビニール袋を取り出した。

 

袋にはミズスマシが一匹入っていて、

それを彼はまず水のグラスに入れた。

 

ミズスマシは元気よく、

スイスイと泳ぎ出した。

 

倅はただ呆然として見ている。

 

するとシナトラは自ら

ミズスマシをつまみ上げ、

 

今度はタリスカーの

たっぷり入ったグラスに放り込んだ。

 

ミズスマシはたちまち痙攣し、

動かなくなってしまった。

 

その瞬間、

シナトラは倅の目を見つめながら、

厳かな声で言った。

 

息子よ。いいか、大人になると

いろんな虫が腹にわくものだ。

 

世の中、気に入ったやつばかりじゃない。

 

嫌なやつと仕事をすることもあるし、

思うように仕事がいかなくなったり、

好きな女に振られたりもする。

 

これも虫のせいだ。

 

そういう時、酒を飲めば

虫をイチコロで殺してくれるんだ。

 

これは人生にとって最も重要なことだ。

 

よく覚えておけよ。

 

「はい、パパ」

 

そして、ようやくバーマンのほうへ

振り向いてこう言った。

 

「じゃあ、いつものタリスカー、

 スパイシー・ハイボールを

 ワンパイントを二つ頼む」

 

まさにバーカウンターは

人生の勉強机なのである。

 

<今日の名言>

男と女は誤解して愛し合い、

理解して別れる。 

        島地勝彦

 

 

今日一日の人生を大切に!

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