「先進医療」と「保険診療」はどこが違うの? ③   vol.618

 

◇ さて、ここで

 

「生命保険会社の

   先進医療特約に入るべきか」

 

   という問題を検討する。

 

これは極めて難問であり、

保険のことなので皆さん一人ひとりで

大きく考え方が違う。

 

ご自身が亡くなったときに

1億円が家族に支払われるように

している方がいる一方で、

 

死んだら意味なしと死亡保障は少額で、

病気になったときの保障を

手厚くしている方もいる。

 

したがってここではやはり事実だけを述べ、

基本的にはご自身で決めていただく

以外にはない。

 

◇ まず、1点目の事実として、

 

「先進医療が使えるような状況になる

 可能性はそれほど高いわけではない」

 

ということが言える。

 

◇ 例えば、先ほど挙げた

    陽子線・重粒子線の治療で、

 

先進医療だけしか選択肢になく、

しかも良い適応になるような人は,

 

ん患者さんの中で

何パーセントぐらいいるだろうか?

 

この分母を調べることは正確には不可能だが、

参考になる数字として、

 

1年間でがんと新しく診断される人は

およそ86万人というデータがある。
(国立がん研究センター最新がん統計より)

 

このうちほとんどの方は

何かしらの治療を受けている。

 

◇ 一方で、先ほどの上位5つを

    合計すると4416件となる。

 

分母を100万人として、

100万人÷4416=226人  となり、

 

ざっくり226人に1人が先進医療を

受けているということになる。

 

もちろん  4416件は、

費用がなく断念した人は入っていないので、

 

もしかしたらもっと多くの人が

先進医療を受ける適応があるかもしれない。

 

◇ つまり、がんになった人のうち少なくとも

    226人に1人   くらいは

「先進医療を受けるかどうか」を考える。

 

この数字は、やや大ざっぱな計算ではあるが

参考にはなる。

 

この頻度をどう考えるか。

 

これは人によって違う。

 

◇ また、2点目の事実として、

    現在行われているがん治療の先進医療は

    ほとんどが重粒子線と陽子線であり、

 

これらは治療に 約300万円

を要するという点だ。

 

がんにかかり、

治療をしていく中で仕事を辞めたり

収入が減ったりする人が多い中、

 

そんな中での 300万円 

かなりの高額だ。

 

がんでショックを受けているところで、

お金についても悩まねばならない。

 

この精神的負担は無視できない。

 

◇ 先進医療特約は金額自体は

   高額ではない(年間1000~5000円ほど)

  ものが多い一方で、

 

あくまで特約というおまけであるため

本体の医療保険に加入せねばならない。

 

さまざまな疑問がわいてくる。

 

そこで生命保険会社の商品開発を

やっている方から内情を伺った。

 

すると、

「特約付きの医療保険料は高くない」

との答えが返ってきた。

 

ではなぜ特約を付けるだけなら高くないのか。

 

それは

「がんにかかる確率×先進医療を

              受けることができる確率」

   現時点低いため、

 

特約分の保険料を

安く設定しているからだそうだ。

 

◇ また、先進医療を受けることが

    できるかどうかは、

    地理的な問題もあるとのこと。

 

つまり、近くにそういう病院があれば

受けやすいし、

 

遠方であれば先進医療を受けるハードルが

上がるということだ。

 

今はまだ先進医療を受けられる施設が

少ないため、受ける人も限られているが、

 

設備が増えて先進医療を受ける人が増えたら、

保険が赤字になる可能性もある。

 

また、先進医療だけを

保障する保険はほとんどなく、

 

医療保険やがん保険とセットで

販売されているとのことであった。

 

ちなみに、一番多く行われている

がんの先進医療の陽子線治療が

受けられるところは国内に18カ所ある。

 

ということは、今後この数が増えていけば、

利用する患者数が増え、

 

先進医療特約の保険料は

だんだん上がっていく可能性もある。

 

こういったことを総合的に考えて、

「先進医療特約」加入するかどうかの

判断しなければならない。 

 

悩ましい問題でもある。  

 

 

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