喪失感漂う歌集   vol.996

城山三郎の遺稿集は題名を

「そうか、もう君はいないのか」という。

 

喪失感は時間をおいて訪れる。

 

葬儀を終えて遺品を整理し、

日常生活に戻りかけたとき、

 

「そうか、もう君は・・・・」

と思い知る。

 

伴侶を亡くした経験をもつ人は

うなずかれるにちがいない。

 

掃除機のコードをひっぱり出す途中にて

   むなしくなりぬああ生きて何せむ

    小池光氏の歌集「思川の岸辺」

 

夫人をがんで亡くして5年が過ぎ、

 

「前に進まねば」の

  心から編んだ歌集であると、

  あとがきにあった。

 

巻末近くに置かれた歌がある。

 

うみあとのかすかになりし

いつぽんの道つづきゐてわれはゆくべし

 

◇「いっぽんの道」で思い出した。

 

あかあかと一本の道とほりたり

 たまきはる我が命なりけり

                     斎藤茂吉

 

「魂極(たまきわる)」(命の枕詞)

 

短歌の道を歩む覚悟をさだめた

一首である。

 

 

今日一日の人生を大切に!

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