◇ 将来の病気は、
どこまで予測できるのか。
二千数百年来の難題に
最新科学のメスが入った。
中国の古い医学書「黄帝内経」に
こんな記述がある。
「上医治未病、
中医治欲病、下医治已病」
大まかな意味は、
「一流の医者は、病気にさせない。
二流の医者は、
病気になりかかっている人を治す。
三流の医者は、
病気になっている人を治す」
一流の医者は、まだ病気になっていない
「未病」を治すと諭している。
◇ 健康と病気の中間に
未病という状態があり、
この時期に体の異常を元に戻せば、
簡単な治療で健康を保てると説く。
未病のうちに何もできないと
病魔は静かに体をむしばみ、
ある日、病気が発症する。
そうなったら治療に時間がかかったり、
重症になったりしてしまう。
◇ 未病が表れる時期の予測に
データで挑んだのが、
東京大学の合原一幸教授や
富山大学のチームだ。
脂質代謝異常や高血圧などが問題になる
メタボリックシンドロームに
かかりやすい特殊なマウスを飼育し、
血液中の成分や体重などのデータを
若いうちから集めた。
メタボを発症したのは8週目だが、
実は5週目の時点で遺伝子のデータが、
明らかに「揺らいでいる」
ことがわかったという。
健康な体はいろいろなデータが
安定しているようにみえる。
一方、病気を発症しそうな体になる途中、
遺伝子や血液中の成分などのデータが
変動し始める。
一つ一つはわずかな変化でも、
総合的に解析すれば、
安定した状態から
揺らぎ始めるタイミングがつかめる。
◇ 今回、数学の理論を駆使し、
体の状態の変化をとらえる
計算方法を編み出した。
この方法が確立すれば、
生活習慣などが何十年もかけて
体にストレスを加え、
むしばまれ始める兆候をキャッチできる。
肝硬変のような病気を発症前に
「治療」できるかもしれない。
◇『未病を診断し、治療する』
という発想が広がれば、
病気の患者が減るだけでなく、
治療薬の可能性も広がる。
これまで病気を治すためには
力不足だった薬の候補物質が、
未病なら治せる「未病治療薬」として
日の目をみることになる。
完
今日一日の人生を大切に!
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