出る月を待つべし
散る花を追うことなかれ
◇ 中根東里は徳川時代に存在した
あらゆる学者の中で、
もっとも清貧に生きた人である。
驚くべき思想に達しながら
世に知られず、
今日まで埋もれている
不思議な人物である。
◇ その文章は 卓絶!
まず高名な儒学者
荻生徂徠(おぎゅうそらい)が
彼を激賞した。
江戸中に名声が広まり、
博士たちはみな驚嘆、
その文才をうらやんだ。
◇ ところが、彼は学問で
禄をもらおうとしなかった。
長屋にこもり、
食のあるときは書を読み、
食が尽きたら履物を作って
市売り小銭を得た。
◇ そんな風だから貧しさは
どこまでも彼を追いかけた。
五二才の時、栃木の佐野で
村塾をひらいていた彼のもとに弟がきた。
「難産で妻が死に、育てられない」と
三歳の幼女を置いて去った。
◇ 東里は独り身。
人生五〇年の時代、老い先も短い。
自分が死ねば、この子はどうなるのか。
幼女を膝に抱き、彼は遠くをみつめた。
そして筆をとって書いたのが冒頭の言葉。
◇ この言葉は人生のすべてにあてはまる。
人生において歓喜の瞬間は短い。
大切な人との別れもくる。
しかし、
桜は散っても、月は必ず出てくる。
それを待つ時間をどのように大切に生きるか。
母を失ったあどけない幼女を抱きしめ、
この清貧の村儒者は、
そのことを言い聞かせようとしていた。
「出る月を待つべし」
という言葉が胸に沁みこむ。
<今日の名言>
今できないことは、10年たってもできまい。
思いついたことはすぐやろうじゃないか。
市川左団次(歌舞伎役者)
*良いアイデアを得たら、
間髪をいれずに、「期限」を決め、
より具体的な実行計画を作りあげることです。
そしたら前に進みます。
今日一日の人生を大切に!
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