「悲観論」に基づく「死の連鎖」に巻き込まれないために  vol.19

 

◇ ある種の自殺が広く報じられた直後には、

    飛行機の墜落で死亡する人の数が

   10倍以上にもなることが

   明らかにされています。

 

そしてさらに驚くべきことに、

その事故は飛行機に限られている

わけではありません。

 

自動車事故による死亡も同じように

急増するのです。

 

何が原因なのでしょうか。

 

それは、自殺を引き起こすような

「社会的要因」が、事故死の増加の原因と

なっているのではないか、というものです。

 

◇たとえば、自殺傾向の高い人々は、

ストレスの引き金となる社会的事象

(他人の自殺、事故死、国際紛争等)に

自殺という方法で反応するということです。

 

他の人々は、同じ出来事に対して、

怒ったりイライラしたり、神経質になったり、

取り乱したりというように、

別の方法で反応するのかもしれません。

 

このような人たちが、私たちの社会で

車を運転したり、飛行機を操縦することが多く

なればなるほど、その乗り物は安全で

はなくなり、その結果、車や飛行機での

事故死が急増することになります。

 

◇この解釈に従えば、

自殺を誘発するある種の「社会的要因」

同じように事故死をも引き起こします。

 

そのために自殺者の数と事故死する人

の数との間に「強い結びつき」

見出されるということになるのです。

 

◇たとえば、新聞の一面で報道される

自殺は、有名人、芸能人等、尊敬される

公的な人物である場合がほとんどです。

 

おそらく、こうした人物の死が

広く報道されることによって、

多くの人々が驚き、悲しむことになるのでしょう。

 

そして、自殺のことで頭が一杯になり

ボーッとしてしまい、車や飛行機のことに

気が回らなくなってしまいます。

 

その結果、一面の自殺記事を読んだ後に、

そうした乗り物に関連した死亡事故が

急増することになるというわけです。

 

また、もう一つ驚くべき事実があります。

 

◇一人だけが自殺したという記事は、

一人が死亡する事故を生じさせます。

 

ところが、自殺に殺人が加わって複数の人間が

死亡した場合は、複数の人間に死をもたらす

事故を起こさせるのです。

 

◇カリフォルニア大学サンディエゴ校にある

社会学者デイビット・フィリップスは、

「ウェルテル効果」と呼ばれるものが

原因であると主張します。

 

ドイツの文豪ゲーテは、今から250年ほど前に

「若きウェルテルの悩み」と題する

小説を出版しました。

 

主人公ウェルテルの自殺を扱ったこの本は、

若者に驚異的な影響を及ぼしました。

 

その本によって、ゲーテが一躍有名に

なったばかりではなく、ヨーロッパ中で

ウェルテルをまねた自殺が相次いだのです。

 

本の影響がとてつもなく大きい

ものだったので、いくつかの国では

この本を発行禁止にしました。

 

フィリップは、この「ウェルテル効果」

今に時代に検証したのです。

 

自殺が一面記事として広く報道された地域では、

その直後に自殺率が劇的に増加していることが、

彼の研究から明らかになっています。

 

フィリップの主張は、問題を抱えた人が

他人の自殺の記事を読むと、

そのなかの何人かが模倣して

自殺するというものです。

 

他人の悲観的な気持ちが

明らかに連鎖していきます。

 

これを「トラウマの連鎖」

とも言います。

 

連鎖の影響を大きく受ける人々は、

同じように問題を抱える人々が

どのように行動したのかに基づいて

自分のとるべき行動を決定しているのです。

 

◇自殺記事や複数の人の死亡事故が発生した時は、

 必ず「死の連鎖」が始まります。

 

記事や報道を規制したり、止めることはできませんが、

できるだけ見ないように、影響を受けないよう、

そして「死の連鎖」に巻き込まれないよう

十分注意が必要です。

 

*今日一日の人生を大切に!

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