歴史にみる教育のあり方⑪ vol.1088

薩摩で行われた青少年教育は

「郷中教育」(ごじゅう)という。

 

薩摩の郷中教育には、

決まった教室も校舎もない。

 

毎日、若者が集まって、

その日の集会場に他人の家の座敷を

借りる交渉から始まる。

 

塀や堀の中で行われる

会津日新館の教育とは明らかに違う。

 

薩摩藩の郷中教育は、

 6歳から15歳くらいが対象で、

 

 長老といわれる25歳までが

 指導に関わる。

 

 先輩が後輩に教える

 伝統的な教育だ。

 

この薩摩藩士の教育法は、

学校や文字による教育と違い、

一風、変わっている。

 

たしかに薩摩の識字率は低い。

 

識字率が低いと、

知識獲得や経済発展には困る。

 

しかし、字を知らないから

馬鹿だということではない。

 

本能的判断力は、

他のどの藩よりしつかりしている。

 

文字文化の浸透が

 おくれていた薩摩では、

 

 実に具体的な教育が

 行われていた。

 

郷中の仲間同士で普段から

細かい生活規範を申し合わせていた。

 

「団結し、親睦を旨とせよ」という

集団主義は郷中教育の特徴で、

 

長幼の序を重んぜよ

 

・幼少のものをいじめるな

 

・婦女に交わるな

 


ここまでの内容は会津藩と似ている。

 

しかし、薩摩藩の教育の

非抽象性、具体性はきわだっている。

 

薩摩の「郷中の掟」の

 条文の中には、

 

・シュロで編んだ緒の高下駄を履け

 

・暑いときも日傘を用いない

 

・抜いた刀はただでさやへ納めるな

 

・槍を持った人に会ったら礼をしなさい

 

・人の肩より上に手をかけるな

 

・他人の家の果物をとるな

 

というように、

とにかく教えが具体的であった。

            つづく

 

今日一日の人生を大切に!

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