◇ 薩摩で行われた青少年教育は
「郷中教育」(ごじゅう)という。
薩摩の郷中教育には、
決まった教室も校舎もない。
毎日、若者が集まって、
その日の集会場に他人の家の座敷を
借りる交渉から始まる。
塀や堀の中で行われる
会津日新館の教育とは明らかに違う。
◇ 薩摩藩の郷中教育は、
6歳から15歳くらいが対象で、
長老といわれる25歳までが
指導に関わる。
先輩が後輩に教える
伝統的な教育だ。
この薩摩藩士の教育法は、
学校や文字による教育と違い、
一風、変わっている。
たしかに薩摩の識字率は低い。
識字率が低いと、
知識獲得や経済発展には困る。
しかし、字を知らないから
馬鹿だということではない。
本能的判断力は、
他のどの藩よりしつかりしている。
◇ 文字文化の浸透が
おくれていた薩摩では、
実に具体的な教育が
行われていた。
郷中の仲間同士で普段から
細かい生活規範を申し合わせていた。
「団結し、親睦を旨とせよ」という
集団主義は郷中教育の特徴で、
・長幼の序を重んぜよ
・幼少のものをいじめるな
・婦女に交わるな
ここまでの内容は会津藩と似ている。
しかし、薩摩藩の教育の
非抽象性、具体性はきわだっている。
◇ 薩摩の「郷中の掟」の
条文の中には、
・シュロで編んだ緒の高下駄を履け
・暑いときも日傘を用いない
・抜いた刀はただでさやへ納めるな
・槍を持った人に会ったら礼をしなさい
・人の肩より上に手をかけるな
・他人の家の果物をとるな
というように、
とにかく教えが具体的であった。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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