◇ 夏目漱石が、熊本の旧制五校で
教えていたときである。
一人の学生が漱石の自宅を
訪ねてきた。
用件は、
「試験をしくじった友人を
落第させないでほしい」
という陳情。
◇ 漱石は快く会ったが、
黙って話しを聞くだけで、
なにも言わない。
学生は黙って
そのまま帰ろうとしたが、
勇気を出して聞いてみた。
「俳句とは一体
どんなものでしょうか?」
◇ 漱石は真面目に
こう答えたという。
「俳句はレトリックの
煎じ詰めたものである。
扇のかなめのような集注点を
指摘し、描写して、
それから放散する連想の世界を
案じするものである。
“花が散って雪のようだ”
といったような常套の描写を
月並みという。
こういう句はよくない。
“秋風や白木の弓につる張らん“
といったような句はよい句である。
◇ 要領を得た見事な説明である。
トンビも大変勉強になった。
それ以降、学生は、
俳句が作りたくて仕方がなかった。
そして死ぬまで俳句を作り続けた。
◇ 学生の名は 寺田寅彦
のちの物理学者
随筆家としても知られ、
数々の名文を残している。
「天災は忘れたころにやってくる」
の警句は、彼の名言である。
◇ 寅彦は、
漱石から二つのことを
教わったと書いている。
自然の美しさを
自分の目で発見すること。
人間の心の中の真なるものと
偽なるものとを見分け、
そうして真なるものを愛すること。
この二つである。
だが、
自然は美しいものばかりではない。
ときに無残な姿を現す。
そして、
忘れたころに必ずやってくる。
彼の警句を忘れないように。
<今日の名言>
実行こそが全て。
これが私の持論である。
アイデアは課題克服の5%にすぎない。
アイデアの善し悪しは、
どのように実行するかによって
決まると言っても過言ではない。
日産自動車 元CEO カルロス・ゴーン
*いいアイデアを持っている人はたくさんいるが
それを実行できる人はきわめて少ない。
今日一日の人生を大切に!
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