弱い立場の人を大事にする “田中角栄”  vol.992

ロッキード事件で東京拘置所から

    保釈されたばかりの角栄。

 

    しかし、そんなことは

    おかまいなしとばかり、

 

目白の私邸には連日、

新潟の地元からバスで陳情客が

やってくる。

 

 だが、日銀総裁が来たとしても、

 田舎のばあさんでも決して態度を

 変えないのが角栄の流儀である。

 

   あるとき、書生が1人の老婆を

      角栄のもとに連れてきた。

 

      頼みごとがあって

      新潟からやってきたという。

 

  「おいっ 角!」

 

ばあさんがいきなり角栄を

呼び捨てにした。

しかし角栄は動じない。

 

おらんとこの伜が悪い女に

騙されて家を出ちまった。

 

かかあとガキが泣いて困っている。

 

 お前、警察の親方に頼んで

 おらの伜をめっけて連れ戻してくれ !

 


 
横で見ていた秘書の早坂茂三が、

 自分勝手な陳情を続けるばあさんを

 思わず叱責しようとした。

 

しかし角栄はそれを制して言う。

 

警察庁長官を電話口に呼べ !

 

 

もしもし田中です。元気かね。

 

ちょっと悪いがメモしてくれ。

 

名前は○○で、住所は○○○

すまんが探してくれ。

 

乱暴せずに家に連れ戻すんだ。

 

いつも悪いな

ばあさんが角栄に言った。

 

角、めっかるか ?

 

 

おそらくな。


そのうちいい便りをしてやるから。

 

じゃ、オラは帰る。

 

角、 元気でな。

 

ばっちゃん、達者で暮らせ。

 

角栄は決して選挙運動のために

    ばあさんの陳情を受け付けた

    わけではなかった。

 

  弱い立場の人間に頼まれれば

  どうしても「ノー」とは言えない性格。

 

それは角栄の最大の長所でもあり、

ときに欠点にもなった。

 

 

今日一日の人生を大切に!

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