◇ 就任1年目の17年末には10年で
1.5兆ドルという大型減税を実現した。
主要国の「同時成長」も追い風となり、
失業率は半世紀ぶりに3%台に低下した。
景気がよい時に、
これだけのばらまきをすれば、当然そうなる。
◇ トランプ大統領は、景気の面では
ついていたともいえる。
就任前から景気が回復過程にあったわけで
ヘマさえ打たなければ、
回復基調に乗ることができた。
しかし、これからは違う。
これからは悪化する。
悪化傾向に入る。
ここからが腕の見せ所だが、
やれることは限られている。
経済悪化で大統領選に敗北という、
典型的な道を歩み始めているように見える。
◇ 外交面でも結果はいまいち。
また、外交面での成果も
大げさにアピールしている。
「私が大統領でなければ、
北朝鮮と戦争になっていた」
戦争になっていたかどうかは別だが、
北朝鮮の金正恩委員長との会談を
実現させたことは、確かに大きな出来事だった。
しかし、まだ何も達成していない。
さらに、国際批判の絶えないイラン核合意の
離脱についても「断固立ち向かう」と
真っ向から反論した。
しかし、このようなトランプ流の脅しが
「虚勢」であることが、徐々にばれ始めている。
◇ 米国株は確かに17年は大きく上昇した。
しかし、18年は10月以降に急落し、
マイナスとなった。
また、3%成長を公約した米経済も
19年後半から減税効果が剥落し、
大統領選がある20年の成長率は
1%台に下がるとの見方もある。
米中貿易戦争の影響が
企業業績にも出始めており、
いよいよ厳しい状況に
追い込まれてきたといえる。
◇ トランプ大統領自身も、
自分の立場が怪しくなってきていることを
理解している。
というのも、今回の一般教書演説では、
下院多数派の民主党に「超党派で動くときだ」
と協力を呼び掛けた。
これまであれだけ横柄な
態度だったにもかかわらず、
急に民主党にすり寄っているからだ。
そして、主要な政策である雇用効果の
大きいインフラ政策と薬価引き下げなどの
社会保障改革について、演説に盛り込んで
民主党に露骨に歩み寄っている。
◇ トランプ大統領は、
「最先端産業にとって重要な
インフラ投資を進めるため新法が必要だ」
とし、
公約にあげていた景気対策の
「二の矢」であるインフラ投資の実現に
躍起になっている。
しかし、米国では道路や空港などの整備に
10年で2兆ドルもの資金が不足している。
これ自体は有権者の支持を
最も得やすい政策だが、
実現性に乏しいのが実情だ。
実現には民主党との協調が不可欠だが、
これまであれだけ対立していたにもかかわらず、
ここにきて二枚舌になっているのは、
見ていて滑稽ですらある。
◇ さらにトランプ大統領はこれまで
「メキシコ国境の壁を必ず建設する」と
豪語してきた。
しかし、これには民主党の協力が不可欠だ。
選挙公約の中で保守層が
最も支持する政策が「壁」だった
ことを考えると、
なりふり構わず、実現に向けて
突き進む可能性もある、と思っていたところ、
案の定、2月15日、トランプ米大統領が、
議会の承認を経ずにメキシコとの
国境の壁を建設するため、
「非常事態」を宣言する方針を決めた。
議会の権限を無視する「禁じ手」に
野党・民主党は反発を強めており、
上下両院で多数派が異なる
「ねじれ議会」での
政策協議の停滞は必至だ。
3月初旬に期限が切れる
米債務上限問題にも影響は避けられず、
米国債の債務不履行のリスクが浮上しかねない。
いずれにしても、トランプ大統領は
公約実現に向けて、相当厳しい状況を
乗り越える必要があり、
その舵取りを一つでも間違えると、
次期大統領選での敗北は間違いない。
完
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