漱石の教え     vol.1031

夏目漱石が、熊本の旧制五校で

    教えていたときである。

 

 一人の学生が漱石の自宅を

 訪ねてきた。

 

用件は、

 

「試験をしくじった友人を

   落第させないでほしい」 

 

という陳情。

 

漱石は快く会ったが、

     黙って話しを聞くだけで、

     なにも言わない。

 

   学生は黙って

   そのまま帰ろうとしたが、

   勇気を出して聞いてみた。

 

「俳句とは一体

   どんなものでしょうか?」

 

漱石は真面目に

     こう答えたという。

 

俳句はレトリックの

   煎じ詰めたものである。

    扇のかなめのような集注点を

    指摘し、描写して、

   それから放散する連想の世界を

   案じするものである。

 “花が散って雪のようだ

  といったような常套の描写を

   月並みという。

   こういう句はよくない。

 秋風や白木の弓につる張らん  

     といったような句はよい句である。

 

要領を得た見事な説明である。

 

     トンビも大変勉強になった。

 

それ以降、学生は、

俳句が作りたくて仕方がなかった。

 

そして死ぬまで俳句を作り続けた。

 

学生の名は 寺田寅彦

    のちの物理学者

 

随筆家としても知られ、

数々の名文を残している。

 

「天災は忘れたころにやってくる」

 

  の警句は、彼の名言である。

 

寅彦は、

     漱石から二つのことを

     教わったと書いている。

 

自然の美しさを

自分の目で発見すること。

 

人間の心の中の真なるものと

偽なるものとを見分け、

そうして真なるものを愛すること。 

 

この二つである。

     

だが、

自然は美しいものばかりではない。

 

ときに無残な姿を現す。

 

そして、

忘れたころに必ずやってくる。

 

彼の警句を忘れないように。

 

<今日の名言>

実行こそが全て。

これが私の持論である。

アイデアは課題克服の5%にすぎない。

アイデアの善し悪しは、

 どのように実行するかによって

決まると言っても過言ではない。     

日産自動車 元CEO カルロス・ゴーン

 

*いいアイデアを持っている人はたくさんいるが
   それを実行できる人はきわめて少ない。

 


今日一日の人生を大切に!

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