麻酔を発見した男達の末路 ③ vol.568

 

◇ 18451月、ウェルズは

     麻酔の公開実技に挑んだ。

 

「外科手術の痛みを感じなくさせる方法を

   知っているとおっしゃるこの紳士から、

   あなた方にお話があるそうです」

 

集まった多くの医学者や医学生を前に、

病院の外科部長JC・ウォレンが

ウェルズを紹介する。

 

誰もが懐疑的な目を向ける中、

ウェルズは患者役となった学生に

亜酸化窒素を吸入させた上で抜歯を始めた。

 

最初は静かに眠っていた

患者役の学生だが、

 

しばらくすると、

うめきのような声を出し始める。

 

ボストンで調達した亜酸化窒素の濃度が、

ふだん使っているものよりも低く、

効き目が弱かったのだ。

 

固唾をのんで抜歯を見守っていた人々は

ざわつき始め、

 

   やがて  「ペテン師!」

 

という罵声をウェルズに浴びせかけた。

 

◇ 世界初となるはずだった麻酔の

    公開実技は失敗し、

 

      ウェルズは逃げるように

      その場を立ち去った。

 

麻酔を発見してから二カ月弱で

実施例も十数回だけ、

あまりに拙速な公開実技だったのだ。

 

しかし、ウェルズは

決してペテン師などではない。

 

それを誰よりも知っていたのが、

公開実技を手伝っていた

弟子のモートンだった。

 

このモートンこそ、

本物のペテン師だったのである。

                            つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

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