◇ 安倍晋三首相は3月末、
IOCのバッハ会長と電話会談し、
東京オリンピックを
「おおむね1年程度延期することを
検討してもらいたいと」 と提案、
「100%同意する」との返答を得た。
その後に安倍首相は記者会見し,
「人類が新型コロナウイルス感染症に
打ち勝った証しとして
完全な形で東京大会を開催する」
と説明した。
この説明になんとなく
トンビは違和感を覚えた。
◇ オリンピックの
開催・延期・中止を判断し
決定する権限を持つのはIOCであって、
彼らが通告または提案してきて
日本側がそれに同意するのが筋である。
しかも彼らがそれを言うべき相手は
組織委員会の森喜朗会長であって
安倍首相ではない。
組織委員会こそが、
日本五輪委と東京都とで作った
東京五輪の責任ある実施主体であって、
安倍首相はその顧問会議議長ではあるが、
森会長を差し置いてバッハ氏と
やりとりする立場にはないと思うのだが…。
◇ バッハ氏が、
「自分からそれを言い出すのを
できるだけ避けているように見えた」
理由について、
スポーツ社会学の
坂上康博氏、一橋大学教授は、
テレビ局やスポンサーに
大きな損害を与えてしまうこと、
IOCが開催地に負担を強いている
という印象を強めることを
恐れていたからだと指摘している。
◇ IOCの2013~16年の収入は
約57億ドル(約6,300億円)で、
その7割強がテレビの放映権料。
かつてはそのまた7割以上を
米国のテレビ局が占めており、
彼らの意向で開催時期は
米国内のスポーツ競技の
閑散期に当たる夏で、
さらに人気のある競技は
米国のゴールデンタイムに
生中継できるよう、
ゲーム開始時間が組まれる
ということがまかり通っていた。
今では、米テレビ局のシェアは
それほどでもなく、
放映権料全体の中で
5割程度と見られているが、
それでもIOCとしては放映権料を
少しでも高く売るのに命懸けなため、
出来れば自分から延期や中止を口にして
テレビ局やスポンサー企業の機嫌を
損ねることはしたくない。
◇ また開催地の経済負担の
大きさという問題は、
すでに五輪そのものの存続に
関わるほどに深刻さを増している。
無理を重ねて誘致して
施設の整備や大会の準備に
莫大な費用を注ぎ込んでも、
大会後にはその国の経済全体が落ち込み、
せっかくの施設も市民スポーツの増進には
役立たずに廃墟化するなど、
マイナス面ばかりが目立つようになった。
そのため招致の手を挙げるのは
ロンドン、東京、パリなど
先進国の巨大都市ばかりになり、
他の都市で市長が動こうとすると
市民から反対運動が起きるような始末である。
◇ つまり五輪そのものがもはや
黄昏のビジネスとなりつつあって、
そこで今回「中止」となれば
破局は間違いない。
「延期」であっても恐らく
何千億円もの追加費用を投じて、
無理に無理を重ねて
強行しなければならないため、
それを見れば
ますます誘致希望者はいなくなっていく。
バッハ氏はたぶん、自分の方からは
「さらに何千億円かけてでも延期せよ」とは
言い出せなかったのだろう。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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