伏魔殿と化した日産の信頼回復が急務 vol.422

 

◇ カルロス・ゴーン日産元会長の

  突然の逮捕で、世界に衝撃が走った。

 

ただ本人はグレッグ・ケリー氏と共に

本件は合法であると容疑を否認しているが、

 

東京地検特捜部は今月10日、

金融商品取引法違反の罪で、

 

ゴーン容疑者と前代表取締役

グレゴリー・ケリー容疑者、

法人としての日産を起訴した。

 

海外の報道では

日本の司法制度への批判が目立つ。

 

違法性の判断はもちろん重要だ。

 

しかしながら偉業を成し遂げた

人物であるからこそ、

 

権利だけ主張するのではなく、

 

 義務を負う覚悟を

高く掲げる必要があるのではなかろうか。

 

◇ 「日本の資本主義の父」と呼ばれる

    渋沢栄一の思想である『論語と算盤』

    という1916年に出版された講演集の中に、

 

「算盤と権利」という章がある。

 

「算盤と権利」とは、

まさに資本主義を象徴する言葉であり、

 

株主として、あるいは経営者としての

権利を主張し、利益(算盤)を獲得する

行為のことである。

 

◇ その「算盤と権利」の章に

「合理的の経営」という項目がある。

 

ここで示す「合理的」

ゴーン氏の得意な目的に向かって

 

無駄なく効率的に行われる経営ではなく、

「理」「合う」経営を

指していると考えられる。

 

渋沢栄一が提唱している

「合理的な経営」とは、

 

「理屈」や「理論」に合うことに

留まることなく、

「道理」「倫理」に合うことも含まれている。

 

◇「現代における事業界の傾向を見るに、

       悪徳重役なる者が出でて、

       多数株主より委託された資産を、

       あたかも自己専有のもののごとく心得、

       これを自ままに運用して

       私利を営まんとする者がある」

 

   「それがため、会社の内部は

    一つの伏魔殿として化し去り、

    公私の区別もなく秘密的行動が

   盛んに行なわれようになって行く」

 

「真に事業界のために

    痛嘆すべき現象ではあるまいか」

 

「現在あるものを無いといい

    無いものをあるというような

    純然たる嘘をつくのは断じてよろしくない」

 

◇ 有価証券報告書という

    上場企業の信用の要となる公開資料に、

 

報酬の先送りで実態よりも

少ない金額を記載するということは、

あるものを無いということであり、

 

「純然たる嘘」は言いすぎかもしれないが、

  偉業を成した経営トップだからこそ、

 

「断じてよくない」行いに間違いはない。

 

ベンチャー子会社を設立し、

私的利用目的で高級住宅などに

約20億円を投じさせたとのこと。

 

渋沢栄一が痛嘆した

「公私区別がない秘密的な行動」

との指摘の通り、弁解の余地はない。

 

◇ ルノーとの経営統合を阻止する

    日産側が反旗を掲げたという

    陰謀説も噂されているが、

 

そのような大型経営統合を

推進するならなおのこと、

 

指揮を取る経営トップの人格が

問われるべきは当然のことだ。

 

◇ 「合理的の経営」において渋沢栄一は

    重役として適任ではない

    3つのタイプを指摘している。

 

1.取締役監査役の名を買いたい重役

2.  好人物だけれども事業経営の手腕がない重役 

3. 会社を利用して自己の栄達を計り、
  踏み台にしようと利慾を図る機関
  にしようと考える重役

 

◇ 1.のタイプと比べると

    2.のタイプは罪が重いと栄一は考えた。

 

日本企業では少なくない

タイプの経営者かもしれない。

 

ただ、故意に悪事を働いたわけではないので、

3.の罪が最も重いと渋沢栄一は指摘する。

 

◇ 実際にあった報酬がないように

     みせかける虚偽の記載を要請したならば、

 

また他の事業に払い込んだように装って

個人的な利益のために着服したならば、

 

ゴーン氏は明らかにこのタイプの重役になる。

 

◇ フランスでは「日本人は恩知らず」

    という報道もあるようだが、

 

日産はフランスの国有企業ではなく、

あくまでもグローバルな上場会社だ。

 

グローバル企業であるからこそ、

相応しい経営トップの人格が

厳しく問われるべきだ。

 

◇ 株式市場に突き放された倒産寸前の

    日産をリスクを負って救済したのだから、

 

再生後の利益(算盤)について

権利があるというのは真っ当な主張だと思う。

 

しかし日産はパブリック・カンパニーであり、

利益を吸い取る「植民地」的な存在ではない。

 

ルノー・日産、そして、三菱自動車の

グローバル・アライアンスの結束力を

高めるという意味においても、

今後のガバナンス強化が不可欠となるだろう。

 

◇ 今回の不正事件は株主、顧客のみならず、

    日産の価値創造を支える社員への

    裏切り行為にも値する。

 

「合理的な経営」により、

日産の失った信頼回復が急務となる。

 

 

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