◇ 最近では、被疑者に対する警察の処遇、
特に自白を求める際のやり方に関して、
裁判所がさまざまな制限を
加えるようになっています。
しかし、いまのところ、警察が巧妙な
心理作戦を使うことに関しては、
裁判所はなんら違法性を認めていません。
このような理由から、犯罪者の取調べの際に
「優しい刑事&恐い刑事」と呼ばれる方法が
現在でも結構使われているのです。
では、劇団刑事座の「優しい刑事&恐い刑事」
の公演内容を本日はご紹介いたします。
◇ 強盗容疑で逮捕されてた若者が
取調べ室に連れてこられて、
二人の刑事から尋問を受けます。
この若者は「ぜったいにやっていない」
と無実を主張しています。
刑事の一人は、その風貌から
「恐い刑事」を演じます。
この役回りは、もちろん見た目で決まります。
「恐い刑事」は、容疑者が椅子に座る前から
「この悪党野郎」と彼をののしります。
(もうすでに劇がはじまっています)
この後の尋問も怒鳴り声です。
彼は自白をうながすため、
被疑者の椅子を蹴飛ばしたりもします。
「恐い刑事」がこのパフォーマンスを
やり始めるとき、パートナーの
「優しい刑事」は後ろの方に座っています。
そして、ゆっくり口をはさみ始めます。
最初彼は「恐ろしい刑事」だけに話しかけ、
暴発しそうな怒りを和らげようとします。
「トンビ!、まあ落ちつけ」
しかし、「恐ろしい刑事」は叫び返します。
「こいつが面と向かって
嘘をついているのに、落ち着けとは何だ!」
「わかったよ トンビ」
「このあたりで、みんなでコーヒーでも飲もうぜ」
「3人分買ってくれないか」
*優しい刑事が自分の財布から
お金を抜き出して、トンビに渡します
「恐ろしい刑事」が渋々部屋から去ると、
さあ、ここで「優しい刑事」の登場です。
「あいつが戻ってこないうちに、
今すぐ強盗をやったと認めれば、
俺がおまえの事件の担当になって、
5年の刑期を2年、いや多分1年ぐらい
減らすことだってできるんだ。
これはおまえにとっても俺にとっても
いいことじゃないのか」
ほとんどの場合、このあと、
すべてが自白されることになるのです。
◇「優しい刑事&恐い刑事」の策略が
効果を発揮する理由は、「優しい刑事」の
協力があったからではありません。
長期の投獄の恐怖が「恐い刑事」の
脅しによって、すばやく被疑者に
吹き込まれます。
そのあと、「優しい刑事」が登場して
被疑者に対して
「知覚のコントラストの原理」
がもたらされ、
「優しい刑事」がとりわけ
理性的で、仏のように見えるようになるのです。
それに「優しい刑事」は
何度も被疑者のために口をはさんでくれて、
身銭を切ってコーヒーまでくれたわけですから、
「返報性の原理」 によって、
「今度は自分が何かをやってあげなければ」
という圧力が、被疑者に自然にかかりまます。
この被疑者が置かれているような
困難な局面では、「優しい刑事」は
救世主のような様相を帯びる
ようになるはずです。
こうなったら、被疑者は間違いなく
自白に追い込まれます。
所轄の刑事さんたちの演技力には
まったく恐れ入ります。
しかし ご安心ください。
このやり方も、
もうそろそろ通用しなくなるようです。
◇ 取調べをする刑事さんが、証拠がないのに
「証拠が上がっている」とふっかけたり、
「正直に言わないと長期拘留になるぞ」と
被疑者を脅迫したりとか、
そういった行き過ぎた取調べに
ストップをかけるため、
取調室の犯人とのーやり取りの
状況を録音したり、ビデオで録画したり、
取調べを可視化する方向に動いています。
そうなると、演技派の刑事さんたちは
この手が使えなくなのです。
常にカメラを意識して、カメラ目線で、
セリフにも気をつかいながら
取調べが行われるるようになります。
ああ よかった よかった!
これからは、刑事さん!
「正攻法」で取調べをお願いいたします。
*今日一日の人生を大切に!
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