徳川吉通(よしみち)  vol.1098

一己を安くせむとて、

数千の人を損ずるは

不仁の甚だしきなり

 

江戸時代の藩にも

 リストラの話はあった。

 

藩でリストラがされる時には

立場の弱い「一代限り」の足軽が

真っ先に狙われた。

 

そもそも藩の軍陣では

足軽は鉄砲の弾よけでもあった。

 

足軽が人垣をつくり、

上級武士はその内側で守られる。

 

尾張藩でもそうであった。

 

1 7 0 0年ごろ、

 

 家老たちが倹約のため

   リストラを断行した。

 

しかし、江戸時代の藩主は

幼児から仁の政治を教え込まれている。

 

このリストラに

藩主徳川吉通が待ったをかけた。

 

人を壮年の時だけ使い、

年老いて解雇すれば、

生活も難儀する。

 

老足軽には妻子もいる。

 

おのれひとりの安泰のため

足軽家族を犠牲にするのは不仁。

 

冒頭の言葉で戒めた。

 

「身分の上と下とは

    敷居の鴨居に同じ、

  国家を共に支える。

 

 鴨居は上にありて

 その痛み少なくし、

 

 敷居は下に在って働き

 よく物にあたること限りなし。

 

下のものが痛みを受ける

仕組みだから、

 

上に立つ者がこれを

救わなければならない」

 

そういって、重臣たちに

足軽200人の解雇撤回を求めた。

 

この藩主の言葉に

  重臣たちも落涙した。

 

 当時の尾張藩には

   その余力があった。

 

しかし、組織の中には

末端扱いされる人がいて、

 

敷居のように踏みつけにされる

悲しみは、たしかに今もある。

 

300年前の殿様の叫びが

心に突き刺さる。

 

<今日の名言>

・リストラで妻より料理うまくなる

・左遷だぞ妻よよろこベクビではない

     第24回サラリーマン川柳

 

*リストラも料理の修行ができると思えば 
 これまた楽し。

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