◇ いかに習近平国家主席でも、
ここまで見通すことは
できなかっただろう。
都市封鎖など強権をふるった隔離政策は
中国ならではの成果をあげたが、
自由世界に拡大させた “コロナ地獄” が、
このような展開になろうとは。
中国は世界のサプライチェーンを
支配する存在になっている。
◇ マスク一つとってみても、
中国の生産量はもともと
世界の半分を占めていたが、
新型コロナのパンデミックで、
生産量は12倍に増加、
1日あたり1億6,000万枚の
生産をするまでになった。
世界のマスク需要は飛躍的に増え、
中国産の奪い合いが起きている。
経済活動をストップする各国は、
中国からやってきた疫病に苦しみながら、
骨髄にしみ通った恨みをひた隠しにして、
中国に物資の供給を頼まざるを得なくなった。
◇ コロナ後の世界はどうなるのだろう。
今の勢いに乗って中国が
アメリカを凌駕する国になれるのか、
それとも、グローバル経済を支えてきた
中国中心のサプライチェーンに、
疑問を抱いているだろう先進各国が、
新たな製造の仕組みを構築し、
中国の野望を打ち砕くのか。
◇ アメリカでは3月、
「中国からサプライチェーンを守る法案」
が提出され、
中国依存からの脱却を訴えた。
アメリカの製薬会社は、
薬の原料生産の多くを
中国の工場に委託している。
例えば抗生物質などは、
中間化学品の調達を
ほとんど中国で行っている。
中国の化学産業のシェアは
世界の 40% を占め、
医薬品サプライチェーンの
中心的役割を担っているが、
いったん今回のようなパンデミックが起き、
医薬品の争奪戦が起こると、
それが他国にとっては、
国家安全保障上の
重大なネックになるのである。
新型コロナの治療薬として
承認が待たれる日本国産の
新型インフルエンザ治療薬
「アビガン」にしても、
原料のマロン酸ジエチルは
中国からの輸入だ。
日本政府は脱中国をはかるため
補助金を出し、
国内化学メーカーによる
マロン酸ジエチル生産を再開させて、
アビガンの増産をはかっている。
◇ トランプ大統領は、
世界の覇権をねらう習近平政権の
頭を抑え込むため、
いわゆる “米中貿易戦争” を仕掛けたが、
どういう因果か、
昔なら中国・武漢の風土病で終わるべき
新型コロナウイルスに足元をすくわれた。
ヒト、カネ、モノが世界を駆けめぐる
グローバル経済のもとで、
あっという間に広がるこの難敵の前には、
アメリカ自慢の最新鋭ハイテク兵器も
何の役にも立たない。
◇ だが、トランプ大統領の
いわゆる「ディール」は侮れない。
中国に力づくで協力させる切り札こそが、
コロナウイルス起源にまつわる疑惑であり、
疑惑の調査に消極的なWHOへの
揺さぶりであろう。
この辺りの駆け引きは実にうまい。
◇ トランプ大統領は4月中旬、
WHOへの資金拠出を
停止するよう指示した。
WHOが新型コロナウイルス対策に
「基本的な義務を果たさなかった」
というのがその理由だ。
米国は昨年、WHOの年間予算の
15%弱に当たる 4億ドル を拠出した。
もちろん、WHO最大のスポンサーだ。
一方、中国政府は
WHOに新型コロナウイルスの
感染拡大を防ぐための資金として、
新たに3,000万ドルを寄付すると発表した。
それまでに表明していた2,000万ドルの
寄付と合わせて、5,000万ドル になる。
謀略好きの悪党が、WHOを利用し、
“いい人” ぶる図式だ。
◇ WHOが米中両国のはざまで、
コロナ起源疑惑にどう対処するのか。
形ばかりの調査で済ますわけにはいかない。
武漢のウイルス研究所から
新型コロナが流出した
確たる証拠なるものを米国が公開したら、
“コロナ戦線” における中国の優位は崩れ、
習近平氏への謝罪要求の声が
世界中にあふれるかもしれない。
まさに、余談を許さない状況だ。
完
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