麻酔を発見した男達の末路 ④ vol.569

 

◇ モートンは筋金入りの詐欺師で、

     全米各地を転々とする中で、

 

金を使い込んだり、

不正経理に手を染めたり、

 

小切手を偽造したりと、

数多くの悪行を繰り返していた。

 

◇ 21歳になったモートンは、

     生まれ故郷のチャールトンに

     戻ってきた。

 

そのとき、偶然にも歯科の

巡回診療に訪れたウェルズに出会う。

 

モートンはそれまでの悪行を改め、

歯科医になるべくウェルズの下で

修業を始めたのだった。

 

人生を立て直したかに見えた

モートンだったが、

 

ウェルズが麻酔の公開実技に

失敗するのを見たとき

「詐欺師の顔」が蘇る。

 

◇ 世紀の大発見を盗み取ろうと

     考えたモートンは、ウェルズから

     麻酔の詳細を聞き出す。

 

そしてウェルズの失敗から一年後、

同じマサチューセッツ総合病院で

公開実技を計画するのだ。

 

しかし、ウェルズと

    同じ亜酸化窒素を使うと、

 

信用されない上に、

成功しても盗用が疑われる。

 

そこでモートンは知人で化学者の

チャールズ・ジャクソンに相談し、

 

亜酸化窒素と同様の効果を持つと

考えられたエーテルを使用することにした。

 

◇ 18461016日、

     今度はモートンによる麻酔の

     公開実技が行われた。

 

患者役となったのは

首に腫瘍を持っていた男性で、

 

メスを握るのはウェルズの公開実技で

案内役を務めた病院の

外科部長ウォレンだった。

 

◇ モートンがエーテルを吸入させると、

    患者は三、四分後には意識を失った。

 

「患者の準備はできております」と、

執刀医のウォレンに告げるモートン。

 

麻酔の公開実技は大成功、

「これはペテンではありません」

とウォレンは静かに宣言した。

 

居合わせた医学関係者は驚愕し、

画期的だと拍手喝采を送った。

 

後に 「エーテル・デイ」

と呼ばれるこの日は、

 

人類が外科手術の痛みから

解放された記念日となるのである。

                                     つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください