◇ モートンは筋金入りの詐欺師で、
全米各地を転々とする中で、
金を使い込んだり、
不正経理に手を染めたり、
小切手を偽造したりと、
数多くの悪行を繰り返していた。
◇ 21歳になったモートンは、
生まれ故郷のチャールトンに
戻ってきた。
そのとき、偶然にも歯科の
巡回診療に訪れたウェルズに出会う。
モートンはそれまでの悪行を改め、
歯科医になるべくウェルズの下で
修業を始めたのだった。
人生を立て直したかに見えた
モートンだったが、
ウェルズが麻酔の公開実技に
失敗するのを見たとき
「詐欺師の顔」が蘇る。
◇ 世紀の大発見を盗み取ろうと
考えたモートンは、ウェルズから
麻酔の詳細を聞き出す。
そしてウェルズの失敗から一年後、
同じマサチューセッツ総合病院で
公開実技を計画するのだ。
◇しかし、ウェルズと
同じ亜酸化窒素を使うと、
信用されない上に、
成功しても盗用が疑われる。
そこでモートンは知人で化学者の
チャールズ・ジャクソンに相談し、
亜酸化窒素と同様の効果を持つと
考えられたエーテルを使用することにした。
◇ 1846年10月16日、
今度はモートンによる麻酔の
公開実技が行われた。
患者役となったのは
首に腫瘍を持っていた男性で、
メスを握るのはウェルズの公開実技で
案内役を務めた病院の
外科部長ウォレンだった。
◇ モートンがエーテルを吸入させると、
患者は三、四分後には意識を失った。
「患者の準備はできております」と、
執刀医のウォレンに告げるモートン。
麻酔の公開実技は大成功、
「これはペテンではありません」
とウォレンは静かに宣言した。
居合わせた医学関係者は驚愕し、
画期的だと拍手喝采を送った。
後に 「エーテル・デイ」
と呼ばれるこの日は、
人類が外科手術の痛みから
解放された記念日となるのである。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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