武者小路実篤の父のことば   vol.70

◇ 武者小路実篤は、

     大正・昭和の小説家である。

 

    お公家の子孫だから、

    子どもの頃は学習院に通った。

 

   成績は悪かった。

 

   当時の学習院の卒業式は残酷であった。

 

   成績の悪い者から順番に

   式場に入る決まりになっていた。

 

  そういうわけで先頭を

  歩かされる劣等生はたまらない。

 

  世間体が悪いから、

  卒業式の日は仮病をつかって休んだ。

 

  実篤の成績はビリから四番目で

  成績の悪い子は、卒業式を休むから

  あやうく先頭を歩かされそうになったという。

 

  ただ実篤には卑屈なところが

  みじんもなかった。

 

  それには秘密があった。

 

◇ 実篤は2歳のとき父親を亡くしている。

 

   病気のため 長い間、床に伏せていた。

 

   実篤の兄は、生まれつき優等生。

 

   病気の父の枕元を静かに歩いた。

 

   だが実篤は暴れん坊で、ドタバタ歩いた。

 

  母が静かに歩くように注意すると、

  父は言った。

 

「元気に歩いているのを喜んでいるのだ」

              「しかるな ! 」

 

   実篤は、この父の言葉を母から

   聞かされて育った。

 

時々思い出しては、父の愛を感じたという。

 

◇ また父は死ぬ直前、実篤を抱き

 

「この子はよく教育してくれる人がいたら、

    世界にひとりという人間になるだろう」

 

    と言った。

 

この言葉ほど、

実篤を勇気づけたものはなかった。

 

成績で人間は測れない。

 

自分は世界でたった一人の人間になろう。

 

実篤は一生涯、

父の言葉を胸に刻んで生きてきた。

 

  幼いころに言われた言葉が、

  その後の人生を決めることは、よくある。

 

そうして小説家・武者小路実篤が誕生した。

 

人間の目線が温かい彼の作品が

トンビは好きである。

 

<今日の名言>

  この道より我を生かす道はなし、

  この道を行く。

 

  君は君  我は我也  されど仲よき

 

  自分を信じて行かなければいけない。

 

  教わるものは遠慮なく教わるがいいが、

  自分の頭と眼だけは

  自分のものにしておかなければいけない。

         ー武者小路実篤ー

 

 

*今日一日の人生を大切に!

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