剣術指南本「猫の妙術」は人生の指南書   vol.433

 

『猫の妙術』の新釈版を本日は紹介する。

 

内容は、ネズミ獲りの名人である

「古猫」が教えを説くという設定だが、

 

この教えがじつに深い。

 

◇ 猫の言葉がわかる剣術者、

     勝軒(しょうけん)が、

    ある日部屋に戻ったら、

    そこに猫ほどの大きさの大鼠がいた。

 

これを退治しようと、

 

技に長けた「黒猫」

強力な気を持って相手を圧倒する「虎猫」

相手の心に寄り添って和らげてしまう「灰猫」

 

が挑んだが、

 

いずれも虚しく、逆襲されてしまった。

 

◇ 刀折れ矢尽きた勝軒が

    ほとほと困っていると、

 

そこに締まりのない顔をして、

毛並みは悪く、躰はふやけ、

 

動きも緩慢の「古猫」が現れ、

いとも簡単に大鼠を仕留めてしまった。

 

なぜ訓練を重ねた強い猫たちが破れ、

古猫が勝てたのか。

 

本書には、その秘密が書かれている。

 

武芸の極意ではあるが、

これが現在の競争環境を生き抜く知恵として、

じつに示唆に富んでいる。

 

ビジネスや生きるうえでぜひ参考にしてほしい。

 

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◇ 現実とは限りのないものなのじゃ。

 

    鼠の姿や振る舞いもまた無限。

 

   ならばどうする? 

 

   技を限りなく増やすのか?

 

◇ 現実の無限には、

    こちらも無限で応じねばならぬ。

 

そのために身につけなければ

ならぬものこそが、

 道理なのじゃ。

 

鼠を捕るための正しい道理さえ、

身のうち心のうちにあれば、

必要な技など自ずから出る。

 

自分の知らない技でさえ限りなくな。

 

こうなって初めて、

現実の無限に無限で

応じることができるじゃろう。

 

◇ わかっておらぬな。

 

   強い弱いなどというのは、

   必ず移り変わる。

 

 自分だけがいつまでも強く、

 敵が皆弱いなどということが

あるわけがない。

 

おぬしの気がいかに強くとも、

必ずそれより強い気の持ち主は現れるのじゃ。

 

どんなに強くとも、

強さなどというのはその程度のものよ。

 

◇ 浩然の気は、心の内の道理の

    赴くままに振る舞うことで、

    どんどん活き活きと働くようになる。

 

相手より強いかどうかは問題ではない。

 

どれだけ道理に寄り添うかなのじゃ。

 

◇ どのようにする、だと。

 

それがまたいかんのじゃ。

 

よいか。

 

考えず、しようとせず、

ただ心の『感』に従って動くのじゃ。

 

そうすれば、

その自然の中に融け込んで形はなくなる。

 

形さえなくなれば、

もはや天下に敵無しとなるのじゃ。

 

◇ そうじゃろうな。

 

 そもそもおぬしは勝つことにこだわり、

その先に何を求めておるのかのう。

 

名声か、 金か?

 

心にたとえわずかでも、こうしたい、

というこだわりがあれば、

それは形となって現れる。

 

そして、その形こそが、

敵だ己だなどというくだらぬ構図を生む。

 

果たして無意味な技比べが始まりじゃ。

 

これでは、

自在な変化などできようはずがない。

 

◇ よいか。

 

   現実も己が心も、

  その底にあって動かしておるのは

  道理なのじゃ。

 

道理には決まった形などない。

 

そこにあるのは変化だけじゃ。

 

だからこそ、現実は移り変わり、

それに従って心も自然と移り変わる。

 

変な邪魔さえしなければな。

 

◇ 『そこ』と『ここ』を分かつのと同じく、

     生と死も、分かつから恐ろしいのであろうか。

 

そもそも、生と死を分けてなんの意味がある。

 

それを分かとうと分かつまいと、

死ぬ時は死ぬ。

 

そこを分けて残るのは、

苦しみや恐れだけではないか。

 

そして、その苦しみや恐れは、

まだ死んでもいないうちから、

 

『死にたくない』

『死なないためには』などと

頭でっかちで余計な形を生む。

 

そして、道理の自然な変化から人を引き離し、

生を害する。

 

◇ 教えとは畢竟、

    相手が自分で見ようとしない場所を

    指摘することじゃ。

 

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◇ なぜわれわれが競合と和して

   崇高な目的に向かうことができないのか、

 

なぜ変化に富む環境に、

子どものような気持ちで

立ち向かうことができないのか、

 

なぜ死ぬことを恐れながら

生きなければならないのか。

 

この本には名著のエッセンスが

びっしり詰まっている。

 

これはぜひ、読んでみてほしい。

 

今日一日の人生を大切に!

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