◇ 茂木外相は11月27日の
記者会見で、
尖閣諸島への中国公船の派遣を
正当化する中国の王毅外相の発言に
反論しなかったことについて、
『外相会談で懸念を伝えた。
記者発表はそれぞれ一度ずつ
発言するルールで行っている』
と釈明した。
王氏の発言は、
『全く受け入れることはできない』
とも強調し、火消しを図った。
◇ 茂木氏の対応には、
自民党からも不満の声が出ている。
参院本会議でも、
『国民はビシッと反論してほしかったと
強く感じている。
なぜ反論しなかったのか』
と異例の批判を行った。
◇ 複数の外務省幹部は、
『一度ずつ発言するというやり方を
うまく利用された』
『王氏があそこまで言うとは
思わなかった』
などと、悔しさをにじませる。
記者発表が言いっ放しになるのは
よくあることだが、
ルールはあくまでも形式的なもので、
トランプ米大統領なら反論していただろう。
◇ これを読んだ頭に浮かんだのは、
外国で発言する場合でも
常に国内を意識しなければならない
という行動様式が中国要人にはある。
中国では、
日本に対する弱腰の姿勢は禁物だ。
中国国民は、
普通では声をあげにくい
共産党政権への様々な批判を
日本に対する弱腰批判の形でぶつけ、
それを突破口に政権を
揺さぶってくる傾向があるからだ。
習近平国家主席の日本訪問が
視野に入っている中で、
それとは矛盾するような
尖閣諸島周辺での中国公船の活動が
活発化するのは、
日本との関係を改善するための
国内的な地ならしの面があるように
思える。
◇ こんな書き方をすると、
「そんな習近平の姿勢を信用するのか」
といった声が出てきそうだが、
中国側は自国の国益にとって
必要な対日姿勢をすでに決めており、
日本も国益をかけてある程度割り切って、
対峙していく必要がある。
◇ それともうひとつ、
王毅外相の個人的な立場もある。
王毅氏は駐日大使を務め、
高度な日本語と英語を操る有数の知日派だ。
そうであればなおさら、
親日派のレッテルを貼られたり、
日本に肩入れしていると
見られたりすることは、
政治生命を左右することになりかねない。
したがって、
必要なタイミングを捉えては、
厳しい対日姿勢を発信するのは、
当然のことのようにも思われる。
◇ 尖閣諸島問題については、
今回の会談の主要テーマでは
なかったとはいえ、
外務省が言うように
双方がこの件を言及した。
中国側の主張に茂木外相が
日本の立場を伝えたことは言うまでもない。
それに、習近平国家主席の来日や
経済面での日中関係の深化が
今回のテーマであるため、
記者会見で先に発言するホストの
茂木外相が積極的に尖閣問題に触れないのは、
当たり前でもあった。
◇ しかし、そのあとに発言する
王毅外相が中国国内を意識して
強硬姿勢をのぞかせ、
慣行を重視する日本側は
その場では反論しなかった。
それが自民党内からの
茂木外相への弱腰批判となったわけで、
今後は記者会見で言及するテーマを
双方ですり合わせ、
それから逸脱する発言があった場合には、
その場で反論するようにしておけばよい。
それができないタイプの外相だったら、
外務省はマスコミを通じて即座に反論を発信し、
相手国にも抗議、あるいは遺憾の意を
伝えなければならない。
自民党から突き上げられ、
やっと読売新聞に取り上げてもらうようでは、
この先の外交も期待できないのではなかろうか。
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