◇ 安倍首相はいつごろ、
このアイデアを思いついたのか。
誰かに入れ知恵されたのだろうか。
検察のナンバー2、
黒川弘務・東京高検検事長を、
半年だけの定年延長で、
ちょうどそのころ退任時期を迎える
稲田伸夫・検事総長の後釜に
据えようという魂胆。
◇「桜を見る会」の問題点が
国会で指摘され、
ジャーナリストや弁護士ら約50人が
昨年11月に東京地検に告発状を
提出したこと、
他の弁護士グループも
告発の準備を進めていること、
なにより、
安倍首相自身が違法性を
自覚していることが、
少なくともこの人事に
なにがしかの影響を与えているように見える。
◇ 7年にもわたり、
幹部官僚人事を思うがままに
動かした安倍官邸は、
あたかも霞が関全体を掌中に
収めたかのごとくふるまっている。
◇ “ 忖度 ” とやらの横行とともに、
人事権の乱用への反発心もまた、
各府省の中にはくすぶっている。
“ 裸の王様 ”と揶揄される安倍首相でも、
そのくらいのことを察するのは容易だろう。
とりわけ検察は、建前上、
政治からの独立性が求められる。
検察が本気になって腐敗を暴き出せば、
いかに政権側に指揮権発動という
伝家の宝刀があろうとも、
メディアを味方につけて政権を
転覆させることも可能である。
◇ 最近の問題は、
検察が安倍政権の中枢部から
数々の腐敗ネタを知りながら、
厄介な内部力学が働いて
拾おうとしなかったことである。
それゆえに現場の検事たちには、
不満のマグマがたまりにたまっているようだ。
その官邸への忖度の中心にいたのが、
まさに今回の異常人事で、
検事総長の座が目の前に
ちらついているであろう
黒川弘務・東京高検検事長 なのである。
◇ 黒川氏といえば、検察というより、
法務省官僚の印象が強い。
若いころは地方検察庁で
検事の仕事をしたが、
その後の大半は、
法務省の大臣官房か、刑事局に在籍し、
大臣官房長を経て2016年9月、
法務事務次官となり、
19年1月に東京高検検事長に就任している。
◇ 実は黒川氏の法務事務次官就任は、
官邸のごり押しによるもので、
当時、法務・検察内部に立った波風は
かなりのものだったらしい。
法務事務次官には黒川氏と同期の
林眞琴氏が就くというのが
既定路線だったのだが、
官邸はこの人事案を拒否し、
官房長だった黒川氏を充てるよう要求した。
では、なぜ官邸は黒川氏なのか?
ということをここで説明しなければならない。
◇ それは、小沢一郎氏を陥れようとした
陸山会事件にまで遡ることになる。
黒川氏は小沢潰しを画策した
麻生政権時代から、
検察と政治の間を小器用に
立ち回ってきたといえる。
後援会観劇ツアーで有権者を
買収した小渕優子・元経産大臣。
URへの口利きで現金を受け取った
甘利明・元経済再生担当大臣。
明白な証拠がそろっている
この二人の事件を潰したのは、
当時の黒川官房長だったといわれる。
◇ 東京地検特捜部が
政界の捜査に入ろうとする際、
法務省に、なぜかお伺いを
立てることになっている。
表向きは特捜が暴走することがないよう、
ということだが、
実際には政権の怒りを買うような捜査を
避けたがる法務省幹部の保身に起因している。
特捜がお伺いを立てる窓口が
官房長というわけで、
意外に官房長は威張りやすい。
一説によると、
小渕、甘利の両事件ともに、
黒川氏が突き返したらしい。
もちろん、黒川氏はぬかりなく
菅官房長官あたりに
“手柄”を報告しただろう。
◇ 特捜の検事たちは
たいそう悔しがったというが、
官邸にしてみれば、
黒川氏を法務・検察の中枢に置いておく
メリットは計り知れない。
官房長から事務次官に
黒川氏が昇格したのは、
甘利氏の不起訴が決まって
数か月後のことだった。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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