◇ 老化を防ぐ研究が着実に進んでいる。
米ワシントン大学の教授らが
老化を抑える働きを突き止めた長寿遺伝子。
これがつくる酵素がカギを握る。
誰にでもある酵素だが
加齢で次第に機能しなくなり、
老化するとみられている。
教授らはこれらの酵素の
働きを保つ生体物質「NMN」に注目。
枝豆などにもわずかに含まれる物質で
日本企業が大量生産に成功。
一部は市販もされているが、
実際に人が摂取して臓器などの
老化を防げるか研究している。
マウスでは効果を確認しており、
「人間でも2~3年で証明できる」
と教授はいう。
近い将来、
死の直前まで健康に生きる
『ピンピンコロリ』が増殖することになる。
◇ 米スタンフォード大学の日本人教授は
ブタの体内で人の膵臓(すいぞう)の
作製を目指す。
膵臓ができないように
遺伝子操作したブタの受精卵に、
人のあらゆる細胞に育つ
iPS細胞を混ぜれば、
生まれたブタの体内に
人の膵臓ができるとみる。
日本政府が2019年にも規制を
緩和するのを待ち、
日本で研究を申請するつもりだ。
◇ 国際電気通信基礎技術研究所が
開発しているのは脳波で操る
ロボットアーム。
「動け」と念じると、
脳から検知した電気信号を
帽子のセンサーでとらえ、
「3本目の腕」が動く。
主幹研究員は、
「人の脳には3本の腕を
同時に動かす能力がある」
と進化に期待する。
◇ 狩猟採集社会では多くの人が
ケガで命を落とした。
農耕社会に移り、
20世紀に抗生物質が見つかり
感染症が激減。
平均寿命は記録が残る約300年間で
40歳弱から80歳超まで延びた。
◇ 人口学が専門の明治大学特任教授は、
「人間は最期まで健康で
潜在能力を最大限発揮しようとする
稀有(けう)な生物になりつつある」と話す。
老いの抑制、臓器の交換、
そして脳と機械の融合が進めば、
2050年には不老不死に近づく。
「老後」が死語になれば
「支える側」として働き続けることが求められ、
社会保障の考え方そのものが変わる。
◇ 日本経済新聞が若手研究者約300人に
「人間の寿命は何歳まで延びるか」
と尋ねたところ、
「150歳」が最も多かった。
家族も4世代、5世代が
同じ時代を生きる終わりなき社会。
一方で50年に日本人の死因で
最多になる死因を尋ねると、
自ら生の長さを決める
「自殺」がトップだった。
◇ ここで古代ローマの哲学者
セネカの言葉を紹介する。
君たちの生はたとえ千年以上続くとしても、
必ずや極めてわずかな期間に短縮される。
セネカは人々の生の浪費を嘆いた。
死があるから生がある。
限られた生の中で
「善く生きること」の意味を
いにしえから哲学者は問い続けた。
死が遠のけば遠のくほど、
私たち人類に問われるのは
一瞬で過ぎ去り続ける生のあり方だ。
「ピンピンコロリ」が
果たして幸せかどうはわからない。
今日一日の人生を大切に!
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