◇トゥキディデスは
古代ギリシャの歴史家。
ギリシャの都市国家だった
アテネとスパルタが、
戦ったペロポネソス戦争を
『戦史』としてまとめた。
これにちなんで、
覇権国とそれに挑む新興国が
折り合えないまま戦争に
至ってしまうことを
「トゥキディデスの罠」と呼ぶ。
◇ 米国と中国の貿易戦争が
軍事衝突にまで至ると
考えている人は、
それほど多くないかもしれない。
だが、歴史をひもとくと
不穏な未来に行きつく可能性が
あることがわかる。
◇ 米ハーバード大学ベルファーセンターは
「トゥキディデスの罠」についての
研究結果を公表している。
研究チームは15世紀の
ポルトガルとスペインの対立や
17世紀後半から18世紀半ばの
フランスと英国の対立など、
過去500年間で覇権を握る
勢力と新興勢力が
対立した16の事例を分析。
そのうち12のケースで戦争に至ったという。
つまり、75%の確率で
戦争に至ったということになる。
◇ 戦争に至った12のケースの中には、
日本が清、ロシアと戦った日清・日露戦争や、
ドイツが英国に、日本が米国に挑んだ
第2次世界大戦も含まれる。
一方、旧ソビエト連邦の崩壊で終わった
米ソ冷戦は、
戦争を回避できた4つのケースのうちの
一つとして紹介されている。
15世紀のポルトガルとスペインの対立は、
両国が世界を2つに分けて支配すると決め、
条約を取り交わしたことで戦争を避けた。
◇ 現状を維持したい既存の覇権国と、
発言力を強めたい新興国が折り合うことが
容易でないことは歴史が示している。
中国は歴史上、長く覇権国であっただけに、
事態はより複雑かもしれない。
ピーターソン国際経済研究所の
フレッド・バーグステン名誉所長は、
「中国がむしろこの数百年、
少し調子が悪かっただけのこと。
世界を制覇し、米国を配下に置こう
と考えても、何ら不思議ではない」と語る。
◇ 実際、中国の習近平国家主席は
2017年の共産党大会で
「中華民族の偉大な復興」を掲げ、
今世紀の半ばまでに総合的な国力と
国際的な影響力で、
世界トップクラスになるとの
長期目標を打ち出した。
「以前のように覇権国の地位に戻るだけ」
との考えが中国側にあるとすれば、
現在の超大国の地位を維持しようとする
米国とのさらなる衝突は不可避だろう。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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