◇ここまでの歴史的経緯をまとめてみよう。
中国ではミドルの人材層が極端に薄い。
また、30代後半以降の大卒者が少ない。
そのため、若年偏重の
人材獲得競争が起こっている。
一方で若年人材は、
急激に大学進学者を増やしたため、
玉石混交となっている。
こうした中で、指定大学や上位数%学生、
もしくは海外トップ大学卒業生にのみ、
超高額&ハイレベルな仕事が用意されている。
ただこうしたハイレベル層に限っても、
人口の多い中国では、
年間数十万人規模となり、
その事例には事欠かない。
こうした情報が日本のマスコミに
取り上げられることで、
それがあたかも中国の一般的なキャリアと
思われてしまっているのだろう。
ただ、急拡大かつジョブホップ型の
エリート育成が続いた中国経済界では、
まともな人事管理ができてはいない。
その問題点を次に書いていくことにする。
◇ 大金で募集する学生とは、
どういう学生かというと、
米国でもその分野のトップ大学、
たとえばカーネギーメロンや
スタンフォードを卒業していて、
在籍していた研究室もずばり
人工知能系でないとだめだという。
そこまでそろう学生は、
いかに中国人の米国留学生が多いとはいえ、
年間10人もいないはず。
◇ 日本でも、希少価値が高い理系、
とりわけ機械・電気系の学生は、
新卒でもエージェントが
相手をするケースがある。
これについては中国も同様のようだ。
ただし、
彼らの初任月給はなべて
1万元(16万円)だという。
中国は日本に比べて
ボーナス割合が低いので、
この月給だと年収は200万円強に
とどまるはずだ。
日本の大手メーカーの初任給の
半分くらいではないか。
「中国企業が超高給で
理系学生を集めている」という話も、
事実を確かめるとこの程度に落ち着く。
◇ 中国の場合、成長率が下がったとはいえ
まだ6%台を維持しているから、
ポストは多々生まれる。
大学進学率はここ20年で急上昇したため、
社会には大卒35歳以上の人材が少ない。
そして、毎年700万人もの大学新卒者が
社会に供給される。
こんな幸せな関係だから、
上を目指す人も、首になった人も、
すぐ仕事は見つかる。
だが、大卒者の数もここから先は急増し、
人材層は急速に厚くなっていく。
◇ 同時に、1978年から始まった
一人っ子政策により、
猛スピードで少子高齢化が進む。
総人口も2025年あたりから
減少に転じるといわれる。
過去の日本を見ればわかる通り、
そろそろ経済成長率が鈍化するはずだ。
「市場任せの人事管理」が
成り立つ前提条件は、じきに崩れ去るだろう。
今のままの中国では、
数年先に「人事管理の危機」が訪れるだろう。
過剰負債や知的財産管理などとともに、
人事管理も中国企業の弱点と
なっていくのではないか。
中国の今の成長は
もうそんなに長くは続かない。 完
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