中国のひとり勝ちはそう長くは続かない ④ vol.549

 

ここまでの歴史的経緯をまとめてみよう。

 

中国ではミドルの人材層が極端に薄い。

 

また、30代後半以降の大卒者が少ない。

 

そのため、若年偏重の

人材獲得競争が起こっている。

 

一方で若年人材は、

急激に大学進学者を増やしたため、

玉石混交となっている。

 

こうした中で、指定大学や上位数%学生、

もしくは海外トップ大学卒業生にのみ、

超高額&ハイレベルな仕事が用意されている。

 

ただこうしたハイレベル層に限っても、

人口の多い中国では、

 

年間数十万人規模となり、

その事例には事欠かない。

 

こうした情報が日本のマスコミに

取り上げられることで、

 

それがあたかも中国の一般的なキャリアと

思われてしまっているのだろう。

 

ただ、急拡大かつジョブホップ型の

エリート育成が続いた中国経済界では、

まともな人事管理ができてはいない。

 

その問題点を次に書いていくことにする。

 

◇ 大金で募集する学生とは、

    どういう学生かというと、

 

米国でもその分野のトップ大学、

たとえばカーネギーメロンや

スタンフォードを卒業していて、

 

在籍していた研究室もずばり

人工知能系でないとだめだという。

 

そこまでそろう学生は、

いかに中国人の米国留学生が多いとはいえ、

年間10人もいないはず。

 

◇ 日本でも、希少価値が高い理系、

    とりわけ機械・電気系の学生は、

 

    新卒でもエージェントが

    相手をするケースがある。

 

これについては中国も同様のようだ。

 

ただし、

彼らの初任月給はなべて

1万元(16万円)だという。

 

中国は日本に比べて

ボーナス割合が低いので、

 

この月給だと年収は200万円強に

とどまるはずだ。

 

日本の大手メーカーの初任給の

半分くらいではないか。

 

「中国企業が超高給で

     理系学生を集めている」という話も、

 

事実を確かめるとこの程度に落ち着く。

 

◇ 中国の場合、成長率が下がったとはいえ

   まだ6%台を維持しているから、

    ポストは多々生まれる。

 

大学進学率はここ20年で急上昇したため、

社会には大卒35歳以上の人材が少ない。

 

そして、毎年700万人もの大学新卒者が

社会に供給される。

 

こんな幸せな関係だから、

上を目指す人も、首になった人も、

すぐ仕事は見つかる。

 

だが、大卒者の数もここから先は急増し、

人材層は急速に厚くなっていく。

 

◇ 同時に、1978年から始まった

    一人っ子政策により、

    猛スピードで少子高齢化が進む。

 

総人口も2025年あたりから

減少に転じるといわれる。

 

過去の日本を見ればわかる通り、

そろそろ経済成長率が鈍化するはずだ。

 

「市場任せの人事管理」が

成り立つ前提条件は、じきに崩れ去るだろう。

 

今のままの中国では、

数年先に「人事管理の危機」が訪れるだろう。

 

過剰負債や知的財産管理などとともに、

人事管理も中国企業の弱点と

なっていくのではないか。

 

中国の今の成長は

もうそんなに長くは続かない。   

 

 

今日一日の人生を大切に!

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