◇ 渋沢栄一の代表的な思想である
論語(仁義道徳)と算盤(生産利殖)の
現代意義とは何だろうか。
一般的には「倫理的資本主義」と云われ、
栄一氏自身も「道徳経済合一説」と表現していた。
ただ、「論語と算盤」が示す正しい道理に
基づいた経済活動とは手段であり、
目的ではない。
◇「論語と算盤」の目的の現代意義とは
「 サステナビリティ」(持続可能性)だと思う。
「サステナビリティ」には算盤が不可欠だ。
ただ、算盤だけを見つめていると
つまずいてしまうかもしれない。
一方、著しく世の中が変化する最中に
論語を読むだけでも
サステナビリティが乏しい。
「論語」か「算盤」ではなく、
あくまでも
「論語」と「算盤」ということになる。
未来へ前進する車の両輪のような関係であり、
片方が大きくて、片方が小さければ、
同じところを回るだけで
前進することができない。
◇ ここで大事な要素は何かというと、
・経済社会の原動力となる
大河のようにお金が循環すること
・自分の身丈に合った消費をすること
・持続的な価値創造を
対象に投資を実践すること
◇ 私たち一人ひとりも
「未来を信じる力」を
少なからず持っている。
その微力な未来を信じる力が
一滴一滴と寄り合って流れ始めれば
「今日よりもよい明日」を
実現させる勢力になる。
5年後に新紙幣が日本社会で流通する頃、
渋沢栄一は大きく声を上げるだろう。
「ワシは暗いところが嫌いじゃ。
タンスに入れっぱなしにしないでくれ!」
◇『論語と算盤』より抜粋
論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの。
正しい道理の富でなければ
その富は完全に永続することができない。
従って、論語と算盤という懸け離れたものを
一致させる事が今日のきわめて大切な務めである。
◇ 渋沢栄一氏の講演集である「論語と算盤」が
刊行されたのは1916年、大正5年であった。
明治時代を経て、新興国である日本が
当時の先進国に追い付いた時代背景があった。
そういう意味で豊かな生活に恵まれていた
日本社会へ渋沢栄一が警告を鳴らしていたのは
「正しい道理の富」であった。
富の永続性には正しい道理が不可欠と考えた。
しかしながら、その新しい時代の幕開けに、
当時の日本社会は耳を貸さなかった。
大正という短い時代の後に到来した
昭和の初期は、
日本の暗黒時代であり、
サステナビリティが問われた時代になった。
お金をタンスや預金に入れっぱなしに
することで満足するという経済社会は、
衰える経済社会でもある。
政府が金融緩和の大義で株式ETFを
買い続けることに安楽を抱く株式市場、
公共支出を増やし続けることが
成長の処方箋と甘んずる事業も同じだ。
「未来を信じる力」を
民間の個々が合わせることによって、
新しいお金の流れが
新しい時代の原動力となる。
完
今日一日の人生を大切に!
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