◇「みちびき」の特徴の1つが
「補強信号」と呼ばれる特殊な信号を出せること。
この補強信号を受信することで
高い精度の位置情報を得ることができる。
補強信号の種類は2つで、
受信装置によって1メートルから
2メートルの誤差のものと、
数センチの誤差のものを
選ぶことができる。
誤差が数センチまで縮まると、
例えば、田んぼや畑の中を正確に移動し、
無人で種まきや収穫などを行う
トラクターやコンバインといった
農業機械の実用化に弾みがつき、
高齢化や人手不足の課題を抱える
農業の現場を変えることが期待されている。
さらに危険が伴う工事現場で求められている
自動で動く重機などの開発や、
雪で埋もれたガードレールに
ぶつからないように除雪ができる
車両の開発なども進められている。
また、ドローンで宅配便などの荷物を
運ぶサービスの実現には、
飛行コースを外れずに目的の場所に
正確に着陸することが必要で
「みちびき」の高い精度の位置情報が
欠かせないとされている。
このほか、防災分野では「みちびき」の
受信装置を備えたブイを沖合に設置し、
発生した津波の場所をより正確に
把握する研究なども始まっている。
◇日本版GPS衛星の「みちびき」の
本格的な運用によって、
さまざまな分野で私たちの暮らしや
産業を劇的に変える可能性がある。
このうち、実用化が急がれている
自動運転の分野でも活用が期待されている。
それは位置情報の精度が高まるため、
車線からはみ出さずに走行が
できるようになる。
大手電機メーカーの三菱電機は、
自動運転の実証実験を兵庫県赤穂市の
テストコースで行っている。
自動車には、このメーカーが開発した
「みちびき」の補強信号と呼ばれる
特殊な信号を受信する専用装置が
取り付けられている。
従来のGPSの受信装置で自動運転をすると
前後左右にコースがずれてしまい
自動車は車線を越えてしまい、
自動運転には到底使えない。
しかし『みちびき』の電波を利用すると、
道路にポールを並べた2.6メートルの幅しか
ない狭い道路をハンドルを握らなくても
見事に走り抜けることができるのである。
◇内閣府は、2年後の2020年には
高速道路と自動車専用道路で
自動運転を実現するとの目標を示している。
「みちびき」の本格的な運用の開始で
自動運転の実用化が大きく進むと
関係者は期待している。
誤差が数センチという「みちびき」の精度は
自動運転には欠かせない。
さまざまな自動化で省力化が可能になり、
まさにこれからの社会を
“導く” 衛星だということだ。
この衛星により
世の中が大きく変わることは間違いない。
完
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