孫氏のバランスシートに載らない資産 ①     vol.324

 

「君は『PC WEEK』って知ってるか? 

                       毎号読んだ方がいいよ」

 

◇ 1987年7月、日本から訪れた孫正義氏に、

    米マイクロソフト創業者の

    ビル・ゲイツはこう告げた。

 

「この業界で何が起きているか分かるから」

 

孫氏はソフトバンクが出版する

新雑誌の初回を飾るインタビューのために

米シアトル郊外までゲイツに会いに行った。

 

取材前の何気ない雑談の中で

ゲイツがつぶやいたこの「ヒント」

ずっと頭の中に残っていた。

 

「ビル・ゲイツが薦めるくらいの雑誌ということは…」

 

孫氏はその雑誌を読むだけでは飽き足らなかった。

 

◇ 94年に株式を店頭公開して

    まとまったカネを手にすると、

 

発行元の米ジフ・デービスを買収してしまった。

 

他にも展示会運営の米コムデックスなど、

当時のソフトバンクの主力事業だった

コンピューター・ソフトの卸売りとは

無関係に見える買収に乗り出した。

 

「僕が欲しかったのは

       『地図とコンパス』だったんだ」

 

この教養講座でも

 今の時代を生きる術を紹介したが、

 

あの時代に孫氏はすでにその重要性を認識して、

「本物」を見抜くツール手に入れていたのである。

 

 

「Compasses over Maps」

地図よりもコンパスを持て!  vol.36

 

◇ それなら雑誌を読んで展示会を

     歩けばいいのではないのか。

 

孫氏によると、

実は当時、コムデックスのオーナーは,

 

展示会の開催前日にゲイツと

ゴルフする習慣があった。

 

テクノロジーの方向性を決めるほどの

影響力を持つゲイツと丸一日語りあう

「権利」を引き継げるのだ。

 

孫氏は

それだけでコムデックスを買う価値があると思った。

 

  バランス・シートには載らない資産なんですよ」

 

と語る。

 

コムデックスの買収額は8億ドル。

 

当時のソフトバンクの身の丈を超える金額だが、

孫は十分に「モト」を取ったと豪語する。

 

遠回りな発想に見えるが、

孫の狙いは結果的に当たった。

                                          つづく

 

 

今日一日の人生を大切に!

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