◇ 「人は見かけによらぬもの」というが、
前近代の社会では、人を判断するのに、
いま以上に見かけが重んじられた。
とくに人相が大切であり、
江戸時代には人を選ぶにあたり、
この人は福相だとか貧相だとか、
迷信みたいなことを大変気にした。
◇ 庶民だけでなく、忍者もそうであったらしい。
忍者は、まず人の姿勢や物腰、
声の調子や顔色をみるという。
声が通るのは、人として よいらしい。
額が広いのもいい。
目については、今と考えが違う。
ばっちしとした目よりも
細長い奥目が「奇人の相」
眉尻が大いに垂れているのは
夫婦が離婚する相だと、忍者は書いている。
この人相術は、人相学を確立した
“水野南北” の影響が強い。
◇ 江戸時代、”水野南北” という
人相占いの天才がいた。
南北の占いは、百発百中!
人の運命をピタリと言い当てたという。
◇ 南北は大阪生まれ。
幼くしてみなしごとなり、
叔父に引き取られたが、そこを飛び出し、
若い頃は無頼(ぶらい)の徒。
酒飲む金欲しさに、盗みをはたらき、
とうとう牢屋に入れられた。
ところが、これがよかった。
南北は牢獄の中で、
たくさんの罪人の顔を見ているうちに、
人相占師になることを思いつく。
彼の研究は徹底していた。
いろんな人の顔をじっと見るために、
まず三年間、床屋で髪結いの弟子をやった。
そのうち顔だけでなく、
人の体つきも見たくなり、
今度は銭湯の三助になって、
三年間、人の裸を観察した。
さらに人の骨もみたくなって、
火葬場に三年勤めた。
火葬場では、骨になった人の
親類縁者も丸ごと観察できる。
これが大変勉強になった。
こうして南北は、独自の人相学
「南北相法」を打ち立てた。
◇ 夫婦の力関係は
目尻のところで見るらしい。
すなわち、目尻が上がった
キツネ目男は亭主関白であり、
目尻の下がったタレ目男は
恐妻家であるという。
◇ また南北は食事にも興味を持ち、
「節食開運説」を唱えた。
食事の量や質が、人の運勢や寿命を
左右するという。
常に美食をして、十分な食事をすると
悪相になり、凶運短命。
逆に、悪相、凶運の人でも、
口にするモノを節し、
腹八分にする人は、良運となる。
◇ 面白いのはハゲ頭についての
記述である。
世間では、「このハゲー ! 」 と
いう言葉が最近話題となっている。
しかし 南北の人相学では、
ハゲは必ずしも悪いことではない。
ハゲは強運である。
逆に
「年よりて髪あつく、額 はげざるものは、
年とるほど、運悪くなるべし」
ハゲない人は、年をとるとともに
運がわるくなる といっている。
ハゲは誠に喜ばしいことなのである。
*今日一日の人生を大切に!
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