◇ 香港の議会が紛糾している。
発端は、中国本土への容疑者引き渡しが
可能になる「逃亡犯条例」改正案であった。
この改正案が議会に提出されたのは3月末で、
審議が始まったのは4月初旬。
そして5月中旬になった
今もなお審議は紛糾し、
議事進行中には
ケガ人が出る騒ぎとなった。
◇「逃亡犯条例」改正案は、
容疑者の身柄を中国本土に
引き渡すことを可能にする
条例であるため、
民主派の議員らは
「中国に批判的な活動家らが
引き渡されるおそれがある」
という理由で反発している。
◇ 審議でケガ人が出る前に、
多くの市民を巻き込んでの
街頭デモも行われた。
このデモの参加人数は、
主催者発表で13万人以上、
警察発表で2万2,000人だった。
この数字の違いからして、
香港はすでに中国化している。
◇ そもそも、「逃亡犯条例」改正案が
浮上したのは、2018年に香港人の男性が
旅行先の台湾で交際中の女性を殺害し、
香港に逃げ帰った事件がきっかけだった。
◇ 香港と台湾は犯罪人引き渡しに関する
協定を結んでおらず、
容疑者の身柄を台湾に移送できないことから、
事件当時は台湾と香港で多くの議論を呼んだ。
そして出てきたのが
「逃亡犯条例」改正案というわけだ。
報道によれば、
香港政府トップの林鄭月娥行政長官は
「改正は中国政府の意を
受けたものではない」
と強調。
引き渡しの要件を、殺人など
重大犯罪のみに限り、
経済犯罪を除外する方針を示した。
親中派が多い商業界の支持を
取り付けようとの考えだ。
◇ つまり、行政側が認めたケースはすべて
この条例にあてはめることができるという、
非常に柔軟性のある条約となることになる。
そこで香港市民および民主派議員が
懸念しているのが、
反中的な言動や思想を持つ人が、
「赤狩り」のように中国に
連行されてしまう、ということだ。
◇ 香港では、2014年の雨傘革命以後、
断続的にデモはあったが、
それらすべては中国の手によって
握りつぶされてきた。
そして4月末、雨傘革命の
中心的役割を担った活動家たちに
禁固刑が言い渡され即日収監された。
◇ 話は少し違うが、1月には
「中国国歌への侮辱行為」に禁錮刑を
科すことを盛り込んだ国歌法が可決された。
香港では、サッカーの国際試合で
香港のサポーターが中国国歌に
ブーイングを浴びせるケースが相次ぐなどで、
中国政府は問題視していた。
そこで、香港政府にゴリ押ししたのが
「国歌法」だ。
中国国歌を、替え歌などで
意図的に侮辱する行為を禁じ、
違反者には最高で3年の禁錮刑と
5万香港ドル(約70万円)の罰金を科すものだ。
小中学校での国歌教育実施の
明記のおまけまでついた。
◇ こうして、徐々に中国色が
濃くなっていく香港において、
市民は最近では諦めに近い心境なのか、
政治への関心が薄れてきているとも
言われている。
どれだけ反対しても、
どれだけ力を終結させても、
徹底的に潰される現実を、
香港市民は身をもって知っている。
「一国二制度」との建前があるため、
形式的には個々の政府を持ってはいるが、
香港側が中国の言いなりになって
立法手続きを行うことで、
香港は中国の思いのままになっている。
香港議会は親中派が占めており、
中国に逆らうようなことはない。
香港は、これからも真綿で
首を絞められるように、
徐々に中国への同化を強いられている。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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