◇ そして経済環境の変化は、
さらに大きな力で高齢者を動かす。
年金給付抑制策である
マクロ経済スライドが実行されれば、
基礎年金の縮小額が
大きくなるといわれる点だ。
公的年金はこれまで、
国民年金と共通の
「1階部分」の基礎年金の場合、
物価や賃金の変動の状況によって
どちらかを基準に給付額を動かす
仕組みとなっていた。
一方、「2階部分」に当たる
厚生年金の報酬比例部分は、
賃金の変動に応じて
その額を動かしてきた。
ところが、90年代後半から
賃金下落が目立ち始めた。
基礎年金では賃金より下落幅が小さい
物価変動に合わせて調整されることが多くなり、
基礎年金の方が2階部分より
“過剰給付”になっていたのである。
2016年の年金制度改正で
このゆがみは是正されることになったが、
今後マクロ経済スライドが実施されると、
今度は基礎年金部分の縮小が
より大きくなるとみられている。
◇ これはどういうことかというと、
現役世代の賃金が低い世帯ほど
年金収入額の減少割合が
大きくなということだ。
これは賃金が低い人ほど、
厚生年金の報酬比例部分の割合が小さく、
基礎年金の割合が大きくなるためだ。
今すぐこの変動が
起きるわけではないが,
しかし、マクロ経済スライドが
毎年実施されれば、
着実に縮小へ向かうことになる。
そうなれば中・低年金層ほど
働かざるを得なくなる。
いわば年金改革が「逆進性」を
引き起こす皮肉な状況なのだ。
◇ もう一つ、
働く高齢者を増やす要因がある。
「やがて高齢者世帯の中で
単身世帯が最も多くなりかねない」
社会保障関係者の中で今、
こんな声が広がりつつある。
厚労省が公的年金の政策立案の際に
常に「標準」とするのは、
夫婦のみの2人世帯
ところが、実際には
高齢者の単身世帯が
ここ十数年、大幅に増えているのである。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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