◇ 麻酔発見のニュースは
瞬く間に医学界を駆け巡った。
イギリスの著名な外科医が
エーテルを使った足の手術を行い、
アメリカ国外にも広がりを見せた。
◇ ところが、医者たちは麻酔を
思うように使うことができなかった。
モートンはエーテルの使用量や濃度など、
麻酔の具体的な方法を一切公開せず、
自分の歯科診療所だけで使おうとした。
モートンの目標は金儲けであり、
医学の進歩や患者を手術の激痛から
解放することなどは二の次だったのである。
◇ 麻酔から得られる利益を独占するために、
モートンは公開実技からわずか11日後の
10月27日に麻酔の特許を申請し、
翌月12日には認められていた。
これによって、
公開実技を執刀したウォレンですら、
麻酔を利用することができなくなってしまった。
◇ ウォレンはモートンに麻酔のやり方を
公開するように懇願したが、
モートンは聞く耳を持たなかった。
引き下がるしかないと、
ウォレンは麻酔の使用を
見合わせる決断を下したのである。
◇ 一方、モートンは、
麻酔がもたらすであろう
膨大な富に心を躍らせていた。
麻酔は人類が待ち望んでいた大発見であり、
特許料を支払ってでも使おうとする人々が
続出するはずだ。
特許権の有効期間は14年で、
その間に得られる特許権の使用料は
36万5千ドル(現在価値で約7百万ドル)
に上ると計算した。
モートンは麻酔の吸引器具も
合わせて販売しようとした。
ウェルズから盗み取った麻酔で、
モートンは大金持ちに
なろうとしていたのである。
麻酔の特許で大儲けを企んだモートン。
ところが、
その思惑は完全に外れてしまう――。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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