麻酔を発見した男達の末路 ② vol.567

 

◇ ホレス・ウェルズは1815年、

    アメリカのバーモント州の

     裕福な大地主の家庭に生まれた。

 

ボストンで歯科医師としての修業を積み、

生まれ故郷で歯科医を開業したのは

21歳のときだった。

 

真面目で研究熱心なウェルズは、

義歯の製法で独自の技術を編み出すなど、

 

常に患者のことを考える

歯科医として評判になっていた。

 

◇ そんなウェルズが更に

     大きなチャンスを掴んだのは、

     184412月のことだった。

 

ウェルズは近所で開かれた

「亜酸化窒素吸入効果の大実演会」

というイベントを見物に出かけた。

 

「笑気ガス」とも呼ばれる

亜酸化窒素を吸うと、

 

人が暴れたり踊り出したりすることが

知られていた。

 

ウェルズが見物した実演会とは、

観客の中から希望者を募って舞台に上げ、

 

亜酸化窒素を吸わせて、

その滑稽な振る舞いを

面白がるというものだった。

 

◇ 亜酸化窒素を吸ったウェルズが

     正気に戻ったとき、

 

一緒に舞台に上がった知人が

足から血を流していることに気づいた。

 

その知人は舞台上で暴れ回り、

椅子に足をぶつけていた。

 

しかし、ウェルズが

「けがをしているみたいだよ」

と指摘するまで、彼は気づかなかった。

 

このとき、ウェルズは閃いた。

 

亜酸化窒素を使えば、

痛みなく虫歯を抜けるのではないかと。

 

◇ 翌日、ウェルズは自らが実験台になる。

    亜酸化窒素を吸入した上で、

 

    仲間の歯科医に親知らずを

     抜いてもらったのだ。

 

目を覚ましたウェルズは、

親知らずがあった場所に、

隙間ができていることを感じた。

 

ウェルズは叫んだ。

 

「これは大発見だ。

   ピンが刺さったほどの痛みも

    感じなかったぞ!」と。

 

人類が待ち望んでいた麻酔が

発見された瞬間であった。

 

◇ ウェルズはすぐさま自身の歯科医院で

     亜酸化窒素を使い始めた。

 

「痛みのない歯科医」という

評判が広がり患者が殺到する。

 

ウェルズは仲間の歯科医に

その方法を伝授する一方で、

その効果を広げるための公開実技を計画する。

 

場所はボストンの

マサチューセッツ総合病院。

 

医学の最先端を走る

ハーバード・メディカル・スクールの

関連病院だった。       

                       つづく

 

 

 

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