◇ 社長の下には役員・管理職がいて、
その他多くがヒラ社員――。
日本に限らずヒエラルキー型の組織は
企業の一般的な姿だ。
そんな中、
上司や部下も命令も階層もない企業が
6月、東証一部に登場した。
指示を受けず自分で考え
自分で動く自律型スタイルだ。
そんな「性善説」経営で
本当にビジネスが回っているのか?
◇ 午前9時、「朝会を始めまーす」
人材紹介や求人サイト運営を手がける
アトラエの東京・麻布十番にあるオフィス。
今週の司会役の社員が
大きな声で呼びかけると
50人弱の社員が集まった。
「うちのチーム、営業の動きを少し変えてみます」
「月末締めの経費精算など忘れていませんか」
事業ごとに分かれた4つのチームが
その週の連絡事項や
プロジェクトの進捗を報告していく。
毎週月曜日に全社員が参加する
通称 「朝会(あさかい)」
子育て中の社員も
インターネットを通じて加わる。
◇ アトラエは今年6月に東証マザーズから
1部に昇格したばかり。
2018年9月期の売上高は
前期比22.9%増の 22億4900万円
営業利益は同18.9%増の
6億6500万円 を見込む。
人手不足で人材紹介業の市場は
好況とはいえ、
同業他社もひしめく中、
8期連続の増収増益を達成。
◇ アトラエでは全社員が参加する会議や
社内チャットで情報の共有を徹底している。
会社法でどうしても必要な取締役や、
CEO(最高経営責任者)、
CFO(最高財務責任者)
といった役職は置くが、
それ以外は基本的に肩書はない。
そのため
出世・昇進という概念もない。
CEOの新居佳英氏は、
「何かを実現するために勝手に動く
スポーツチームのような組織」と表現する。
「意思決定の権限を現場に降ろした方が、
適切で早い。そのために情報は
すべて共有しておく必要がある」
と新居氏はいう。
◇ アトラエのようなフラットな組織運営は
「ホラクラシー(Holacracy)」と呼ばれる。
語源は物理学や哲学で使われる「holon」で、
「部分でありながら全体でもある」
という概念を示している。
2007年ごろから米国で始まり、
民泊仲介のエアビーアンドビーや
ネット通販のザッポスが採用し、
一つの潮流となった。
経営学の世界では
「ヒエラルキーかホラクラシーか」
といった優劣を論じ合う動きが活発だ。
◇ アトラエは8期連続で増収増益を続けている。
ホラクラシーが成立する条件の第一は、
「情報共有」
通常の会社で階層がなりたっているのは、
持っている情報に格差があるからだ。
課長より部長が、部長より取締役が、
持っている情報が多い。
アトラエにはまず、この情報格差がない。
◇ ある大手人材企業の担当者は、
「ウチではありえない」と話す。
新規登録や解約情報の共有は、
良くてもマネジャークラスまで。
「末端の社員に伝われば動揺が広がるし、
情報が漏れる可能性も高まる」(同担当者)。
由らしむべし、知らしむべからず――。
部下の知らない情報を
持っているからこそ上位は優位に立つ。
そこに指揮・命令関係が生まれ
組織が機敏に動く。
アトラエの場合、そのメリットを放棄してでも、
危機感を共有してフラットにアイデアが
吸い上がる効果を重視したといえる。
つづく
今日一日の人生を大切に!
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