◇ 「金剛組」は反社会的勢力ではない。
創業1400年の歴史を持つ
世界最古の企業である。
その金剛組の経営哲学を
同社相談役・金剛利隆氏がまとめたのが
「創業一四〇〇年」
本書が出版される直前、
2013年10月28日に著者は永眠。
これが遺作となる。
◇ 金剛組の教えの中心は、
第三二代喜定が遺した
「遺言書」と呼ばれる十六条の戒律。
・御殿ならびに武家のことは
深く考えなくともよい。
その主人の好みに従うこと。
・読書・そろばんの稽古をせよ。
これは職家で一番大切なこと。
・なにごとも諸事万端取引してくれる方々へは
無私正直に対応しなさい。
・大酒をしないように心がけなさい。
・身分以上の華美な服装をしないこと。
・人を敬い、穏やかな言葉遣いをすること。
・配下の者、弟子などには深く情けをかけること。
・なにごとにも、他人と争うな。
どの人と接するときも慇懃(いんぎん)にせよ。
・自身に不相応なことは、
親類を集めて相談したうえで、
万事取り計らいなさい。
・先祖の霊年、命日には怠けることなく
香華を供え、供養の営みをすること。
◇ さまざまな教えが書かれており、
その中でも興味を持ったのは、
十六条とは違うこの一文。
<いつの時代に、
誰に見られたとしても
恥ずかしくない仕事をする>
「誰に見られたとしても
恥ずかしくない仕事をする」なら、
よくある話だが、
これに「いつの時代に」が加わると、
まるで意味が変わる。
自分の仕事は、数十年後、
数百年後誰かに見られても
恥ずかしくない仕事だろうか?
自分の仕事の中に
歴史と未来が意識できているか。
◇ 宮大工は完成した寺社に、
工事関係者の名前を書いた
「棟札(むなふだ)」を残す。
これが見つけられるのは、
次の解体作業の時。
短くても数十年、長ければ数百年間、
誰の目にも触れない棟札もある。
そういえばあのジョブズも、
マックの回路基盤に
開発者の名前を刻印していた。
これは建築とはちがい、
他人の目に触れることはまずない。
◇ <最高の仕事をすること。
そしてそれができる弟子を育てること>
それが宮大工の使命であり、
棟梁の責任でもあると、
著者は語っている。
ここには我々のいまの世界にも
相通じるものが、確かにある。
今日一日の人生を大切に!
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