「ふるさと納税」は地方創生どころか地方をダメにする ② vol.476

 

◇ 返礼品を選定する裁量は

    自治体に委ねられている。

 

企画を公募したり、競争させる仕組みを

導入していたりする自治体も少なくないが、

 

公共工事の公募入札のように

厳密に要件を決められる類のものではない。

 

価格や品質ではなく

「どんな商品やサービスが寄付金を集めそうか」

という「目利き」の力が問われることになるが、

 

流通企業が営々と育成しているバイヤーや

マーチャンダイザーなどの機能を

持たない自治体にそれはほぼ期待できない。

 

結果として、応募する企業は、

 

消費者(寄付者)ではなく自治体の担当者に

選ばれることを意識するようになる。

 

◇ もちろん魅力のない商品には

    寄付金が集まらない。

 

結果として淘汰されるという

メカニズムも働きそうなものだが、

 

「一定範囲であれば、寄付金は税控除」

 

という仕組み上、

 

正しい「価格」というものが

消費者(寄付者)に意識されにくい。

 

表示上は「1万円」でも、

申し込むときには、

 

「価値のほどはわからないけど、

   税金で収めるよりはマシだから」

 

などと考えることになるからだ。

 

◇ 一般に、消費者は

   「価格」と「価値」を比べて

     商品やサービスを選択する。

 

価格が不明瞭なところに、

正しい市場メカニズムは働かない。

 

別の業者もこう明かす。

 

「ふるさと納税の返礼品ではない

  独自ルートの通販の方が

 お客様の評価が厳しい」

 

裏を返せば、

「どうせ自己負担がほとんどないので」と、

 

商品やサービスの質を評価する

視線が甘くなる消費者(寄付者)が

少なからずいる、ということだ。

 

◇ 市町村などの自治体の担当部署に

    選定されれば受注できる。

 

宣伝は市が担ってくれて、

受注分をこなせばいい。

 

消費者の評価も甘い。

 

この「公共事業」に依存していくのは

確かに楽だろう。

 

だが、消費者(寄付者)に向き合わない

この姿勢を続けていて、

企業が健全に発展するとは思えない。

 

◇ ふるさと納税はまだ歴史の短い制度で、

    しかも変更の可能性が強く示唆されている。

 

特需に浮かれて設備投資した結果、

制度変更でその需要を失ったとしたら、

 

ふるさと納税頼りで受注をこなし、

いつしか自力で顧客を獲得する力を失った

“ゾンビ企業”が直面するのは

厳しい運命だろうと言わざるを得ない。

 

もちろん、消費者(寄付者)の声に耳を傾け、

向き合いながら「目利き」を磨いて、

 

自分たちの魅力を精一杯伝えようと

努めている自治体や企業もある。

 

だが、そうした事例は彼ら彼女らの

「自制」に成り立っているのが実情だろう。

 

◇ ふるさと納税の仕組み自体が

    上記のような「無責任な公共事業」

   集める制度設計になっていることが

 最大の問題だ。

 

このルールで戦おうとすれば

多くのプレーヤーがおのずと堕していく。

 

これまでのふるさと納税に関わる論戦は

「地方が潤う」という前提で

交わされるカネの争奪戦だった。

 

だが、長期的な視点に立った時に、

この制度が本当に地方を潤す道なのか。

 

返礼品競争が一巡したあと、

その「そもそもの議論」が

浮かび上がってくるだろう。

 

その前にに早く気付くべきではなかろうか。

                                              

 

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