◇ 返礼品を選定する裁量は
自治体に委ねられている。
企画を公募したり、競争させる仕組みを
導入していたりする自治体も少なくないが、
公共工事の公募入札のように
厳密に要件を決められる類のものではない。
価格や品質ではなく
「どんな商品やサービスが寄付金を集めそうか」
という「目利き」の力が問われることになるが、
流通企業が営々と育成しているバイヤーや
マーチャンダイザーなどの機能を
持たない自治体にそれはほぼ期待できない。
結果として、応募する企業は、
消費者(寄付者)ではなく自治体の担当者に
選ばれることを意識するようになる。
◇ もちろん魅力のない商品には
寄付金が集まらない。
結果として淘汰されるという
メカニズムも働きそうなものだが、
「一定範囲であれば、寄付金は税控除」
という仕組み上、
正しい「価格」というものが
消費者(寄付者)に意識されにくい。
表示上は「1万円」でも、
申し込むときには、
「価値のほどはわからないけど、
税金で収めるよりはマシだから」
などと考えることになるからだ。
◇ 一般に、消費者は
「価格」と「価値」を比べて
商品やサービスを選択する。
価格が不明瞭なところに、
正しい市場メカニズムは働かない。
別の業者もこう明かす。
「ふるさと納税の返礼品ではない
独自ルートの通販の方が
お客様の評価が厳しい」
裏を返せば、
「どうせ自己負担がほとんどないので」と、
商品やサービスの質を評価する
視線が甘くなる消費者(寄付者)が
少なからずいる、ということだ。
◇ 市町村などの自治体の担当部署に
選定されれば受注できる。
宣伝は市が担ってくれて、
受注分をこなせばいい。
消費者の評価も甘い。
この「公共事業」に依存していくのは
確かに楽だろう。
だが、消費者(寄付者)に向き合わない
この姿勢を続けていて、
企業が健全に発展するとは思えない。
◇ ふるさと納税はまだ歴史の短い制度で、
しかも変更の可能性が強く示唆されている。
特需に浮かれて設備投資した結果、
制度変更でその需要を失ったとしたら、
ふるさと納税頼りで受注をこなし、
いつしか自力で顧客を獲得する力を失った
“ゾンビ企業”が直面するのは
厳しい運命だろうと言わざるを得ない。
もちろん、消費者(寄付者)の声に耳を傾け、
向き合いながら「目利き」を磨いて、
自分たちの魅力を精一杯伝えようと
努めている自治体や企業もある。
だが、そうした事例は彼ら彼女らの
「自制」に成り立っているのが実情だろう。
◇ ふるさと納税の仕組み自体が
上記のような「無責任な公共事業」を
集める制度設計になっていることが
最大の問題だ。
このルールで戦おうとすれば
多くのプレーヤーがおのずと堕していく。
これまでのふるさと納税に関わる論戦は
「地方が潤う」という前提で
交わされるカネの争奪戦だった。
だが、長期的な視点に立った時に、
この制度が本当に地方を潤す道なのか。
返礼品競争が一巡したあと、
その「そもそもの議論」が
浮かび上がってくるだろう。
その前にに早く気付くべきではなかろうか。
完
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