◇ 「私、近頃よくこう思うの
人生に後悔はつきものじゃないかしらって
ああすればよかったなあという後悔と
もう一つは
どうしてあんなことをして
しまったんだろうという後悔……」
◇ これは
「男はつらいよ 第17作
寅次郎夕焼け小焼け」 の
志乃のセリフです。
この志乃役を演じたのは
往年のスターである岡田嘉子さんです。
岡田嘉子さんは戦前にソ連へ亡命し、
戦中戦後の数々の苦しい体験を経て、
日本へ一時帰国している時に
この映画に出演されたそうです。
その岡田さんの人生は
「数奇な生涯」という言葉が当てはまります。
◇ 愛人と手を取って南樺太の国境線を越え、
亡命したが、運悪くスターリンの大粛清の
最中だったこともあり、愛人は銃殺。
岡田さんも10年もの間、厳しい収容所で
強制労働を強いられています。
◇ 10年間の収容所生活から解放された
岡田さんは、モスクワ放送のアナウンサー
になって、後に滝口慎太郎氏と結婚。
彼の死後、1972年に滝口氏の遺骨とともに、
実に34年ぶりに帰国を果たします。
◇ この「夕焼け小焼け」に出演した当時、
岡田さんは一切そのことを人にもスタッフにも
言わなかったため,この衝撃の事実がわかった
のは、その後、ソ連に戻ってからだといいます。
◇ この言葉は、その経緯を知ってから考えると、
岡田さんの人生そのものであり、岡田さん
以外の人には言えないセリフだった
のかもしれません。
もしかしたら、脚本にはない本人の
アドリブだったのではないでしょうか。
◇ 岡田さんは14年後に日本を去り、
私を愛してくれた2人の男が眠るソ連に戻り、
かの地で独り寂しく永眠されたそうです。
多磨霊園にある墓碑には
「悔いなき命をおしみなく」
という自筆が刻まれています。
愛人と亡命しなくても後悔しただろうし、
亡命しても後悔がつきまといます。
人生とは、そのとき そのとき を
納得して生きていかない と
しかたないのかもしれません。
それが 人生です。
*今日一日の人生を大切に!
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