◇ 学問を実地に試す
薩摩の郷中教育は
「詮議」といものを生み出した。
「詮議」とは、
実際にはない状況を
頭の中で仮想させて、
対処を考えさせる
いわゆるシュミレーションの
ことである。
◇ たとえば、
殿様の急用で使いをして、
早馬でも間に合わない場合は、
どうするか?
先輩たちが幼い子に聞く。
幼い子がちょこちょこ前に出て、
早馬の後ろから針を持って、
馬の背中をちくちく刺します。
そうしたら、いつもより速く走ります。
などと答える。
この回答は、
のちの初代文部大臣、
森有礼(ありのり)が
実際に答えたものである。
◇ 小さいことでもいい、
とにかく考えさせる。
「事が起きる前に、
事態を想定して考えておく」
これは戦争や外交に臨む人たちや
政治家の育成には極めて重要である。
起きる前に考えておく、
これが薩摩の「詮議」であった。
◇ こんな詮議もあった。
館の横の馬場を通行していて、
石垣の上からつばを吐きかけられたら、
どうするか?
この問いに
直ちに門から入り、
つばを吐いた人間をとっちめる。
と答えた者は不心得とされる。
石垣のすぐ下を通るから
つばをかけられるなどの無礼にあう。
道の真ん中を歩くようにしろ!
常にそれぐらいの知恵をもって
油断なく日々の一挙手一投足を考えよ。
という答えが正しい。 つづく
今日一日の人生を大切に!