◇ 18年の12月に、ブルームバーグから、
驚くべきデータが公表された。
中国の住宅在庫が5000万軒というものだ。
調査したのは、
中国の西南大学の甘犁教授という。
重慶市にあるこの大学は、中国の失業率でも、
本当を示すデータを出している。
5,000万戸は、中国の全住宅の 22%、
1年で行う1,000万戸建設の 5年分 になる。
これで、中国の企業負債が、
毎年平均2兆ドル(220兆円)増える一方で、
減らない理由が分かった。
作った物件が、
約5年分も売れ残っていたのだ。
普通の世帯が買うことのできない
価格(年収の10倍から15倍以上)の
新築価格だったからだ。
売れていないから、
価格は最初のまま統計され、
次のまた上がった新築価格に
なっているのだろう。
売れなければ世帯のローンには
振り替わらないので、
企業の建設費の負債が増え続ける。
◇ 商業用の不動産でも、急激に伸びている
アリババなどのネット販売によって、
客をとられ、閑古鳥が鳴いている
ショッピングセンターが多いという。
これも企業部門の負債の増加になる。
利益が出ず、借金を減らすことができなくて、
運転資金借り入れが増えているからだ。
◇ こうした不動産が、
不良在庫にならないのは、
政府の意向で動く計画経済の銀行が
企業に対して、利払いの分の追い貸しを
しているからだろう。
他の国では、資金繰りのために
投げ売りになる。
銀行からの追い貸しが続く間は、
新たな借入金で利払いができるように
見えるので、不良債権ではない。
GDPの70%を生む国有企業の負債は、
年220兆円という異常な金額で、
膨らみ続けている。
◇ 最近10年で3倍に上がり(年12%上昇)、
中国でもっとも高い香港の住宅価格は、
2018年の8月のピークからは
5%下げている。
上海の新築物件も、10%下げている。
売れていない在庫が、
もっとも多い深圳も当然下げているはずだ。
◇ 中国の総人口は、2018年から、
日本の8年遅れで減り始めている。
世帯所得の増加率も年10%の期待から、
商品生産の粗利益である
GDPの伸び率の低下に対応して、
5%程度かそれ以下に
下がってきているからだ。
◇ 所得の、期待上昇率の低下への認識は、
年収の10倍から20倍の高い住宅を買って
ローンを組むことを、押しとどめる。
共稼ぎを想定した男性は
10年後、20年後の住宅価格と、
所得の上昇を期待して(織り込んで)、
住宅を買っているからだ。
中国に多い共稼ぎで、
無理なく買える住宅価格は、
大都市部で、共稼ぎ700万円の年収の
5倍から6倍までだ。
中国では、住宅を買うことが結婚の条件だが、
価格が上がってしまった30歳以下の世代には、
これが果たせなくなった。
◇ 2019年に、中国の新築住宅価格が
上がる要素はあるだろうか。
(1)米中貿易戦争で、輸出が減り、
所得を決めるGDPの伸びは低下する
(2)増え続けていた中国の人口が、
横ばいから下落に入ったことにより、
増え続けていた住宅の需要動機が下がり、
少しずつ減少に向かう。
◇今まで述べてきた
これらの要素を総合すると、
2019年は、
「中国住宅価格が下がる開始年となる」
ということになる。
需要数が減れば、売れる住宅価格は
10%、15、20%、30%と価格が下がる。
これが、2018年秋から2019年にかけ、
新築価格ピークアウトしたあと、
必ず起こる。
政府が管理している新築住宅価格に、
需要数の急減が反映されることはなくても、
実際の売買市場では下がって行く。
数年後は、新しく作られる新築価格も、
大きく下げるだろう。
5000万戸の空き家が
価格低下に及ぼす圧力は巨大だ。
景気の減速がもたらす住宅価格の下落なら、
回復も考えられる。
しかし2019年からの下げの要因は
景気循環ではなくて構造的なものだ。
銀行とノンバンクの不動産融資は不良化し、
これから中国はリーマン危機のような
金融危機に向かう。
そして日本も間違いなく
その渦の中に巻き込まれていく
ことになるのである。 完
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