「戦国策」: 前漢末の学者劉向(りゅうきょう)が、
皇帝の書庫にあった「国策」「国事」
などの竹簡を編んで作ったのが『戦国策』
「戦国時代」という言葉はこの書に由来する。
◇ 魏の国の安釐王が隣の趙という国を
攻めようとしたときのこと。
魏の季梁という「説客」は、
たまたま諸国遊説の旅に出ていて
国を留守にしていたが、
この噂を聞くと、慌てて帰国し、
安釐王に面会を求めた。
◇ 季梁としては、なんとかこの戦争を
中止させようと考えていた。
しかし、初めはそんな素振りなど、
おくびにも出さない。
彼は安釐王に会うや、
まずこんな例え話を始めた。
◇ 今、帰ってくる途中で、
1人の男に会いましたが、
車を北へ走らせながら、
『楚の国に行くつもりだ』
と申します。
『南の楚の国に行くのに、
なぜ逆に北へ向かっているのか』
と聞きますと、
男は、
『馬はとびきり上等だ』
と申します。
『良い馬かもしれんが、
道を間違えている』
こう言いますと、
『旅費もたっぷりある』
と申します。
『そうかもしれんが、
道を間違えている』
重ねて忠告しますと、
男は、
『良い御者がついている』
と答えます。
こう条件が揃っていれば、
ますます楚から遠ざかっていくだけです。
安釐王が思わず膝を乗り出したところで、
季梁はおもむろに本題に入った。
◇ ところで、今あなたは
天下の信頼を得て覇王になり、
天下に号令しようと考えておられます。
国の大きいこと、
軍の強いことを頼んで、
隣の国を攻め、領土を広め
名声を得ようとしておられます。
しかし、今ここで下手に動けば、
それだけ覇王の道から遠ざかりましょう。
それはちょうど、
楚の国に行こうとしながら、
逆の方向の北へ車を走らせているような
ものではありませんか。
◇ 季梁の話は、
基本方針を誤っていれば、
いかに努力しても、
否、努力すればするほど、
目的から遠ざかってしまうことを教えている。
◇ 我々もともすれば
この話しのように
同じ過ちを犯しがちだ。
仕事においても、経営においても、
人生を生きていく上においても、
絶えず基本方針の確認を怠ってはならない。
でないと、せっかくの努力も、
骨折り損になりかねないのである。
今日一日の人生を大切に!