◇ 東京五輪の準備作業を統括する
国際オリンピック委員会(IOC)の
ジョン・コーツ調整委員長は、
コロナ禍が地球上から一掃されない限り
東京五輪の開催はあり得ないと述べ、
その判断の山場は「今年10月頃になる」
との認識を示した。
日本の各紙はやや遠慮がちに
表現を和らげているが、
海外の新聞の見出しには,
「東京五輪は決して実現しないだろう」
と掲載された。
◇ コーツ氏は、
新型コロナウイルスの感染者が
急増するブラジルを例にあげて、
数少ない先進国などを別にすると
多くの国にとってこの事態に
対処するのは困難で、
またワクチンは仮に出来ていたとしても
世界中に行き渡るのは簡単ではない。
「206カ国・地域から1万人以上の選手のほか、
2万人の報道関係者、6万人のボランティアが
集まる五輪開催は現実的に難しい」
と指摘した。
さらにその上で、コーツ氏は、
「東京五輪が開催できるとすれば
2021年限りで、再延期はない」と断言した。
◇ IOCのトーマス・バッハ会長も
英BBCに対し、
「21年開催が無理になった場合は中止」
との見通しを示し、
その理由として、
「世界中のスポーツ日程を
変更することはできないし、
アスリートを不確実な状況に
とどめてはおけない」などを挙げた。
橋本聖子五輪相は
「そんな話は聞いていない」の一点張りだが、
IOC側が言い出していることは
極めて現実的で、
結局日本もそれに従わなければ
ならないことになることは、
誰が考えてもわかる。
◇ コーツ氏は、決断の時期が
なぜ今年の10月なのかの理由を
明示していない。
しかし、今は次第に沈静化しつつある
ように見えるコロナ禍が、
この秋頃には大きな第2波となって
再び全世界を襲うのではないかという観測は、
多くの専門家の間で共有されている。
◇ ニューヨーク・タイムズの
ニコラス・クリストフ氏は、
「多くの疫病学者が深く懸念するのは、
われわれがこれまでに耐えてきたものより
もっと過酷な、大きな第2の波が
今秋にやってくることである」
と指摘している。
おそらくコーツ氏は、
そのような専門家の間の
常識とも言える識見に従ったのだろう。
クリストフ氏は言う。
「これは新型ウイルスで、
人類にとって新しいものであって、
何が起きるか誰にも分からない」
◇ あれやこれやのワクチン開発話に
飛びついてはならない。
我々が、安全で効果があると
証明されたワクチンを得たとしても、
それをとてつもない規模で
製造しなければならない。
仮に十分なワクチンが出来たとしても、
今度は注射器、針、薬品を入れる
ガラスビンが足りるのかということになる。
米国のワクチン需要に見合う
ガラスの薬ビンを製造するのに、
2年間はかかるだろう……。
その後、その他の国への供給
という流れを考えても、
来年の東京五輪の実施は
ほぼ絶望的と言ってもいい。
つづく
今日一日の人生を大切に!