◇ こうした人材登用計画のなかでも、
報告書で一番の批判の
対象になっているのは、
2008年に胡錦涛政権が始めた
「1,000人計画」である。
これは2,000人の先端的な研究分野の
研究者をリクルートする計画だったが、
2017年には 7,000人 の
高度な専門家の引き抜きに成功し、
当初の目標を大きく上回った。
引き抜かれた研究員のほとんどは、
中国の国立大学や、国立の研究機関で、
高いサラリーが提供されて研究を継続している。
◇ こうした研究者のなかには、
アメリカの研究所に
在職していたときから、
すでに中国政府の資金提供を
受けていた人々もおり、
彼らはその事実をアメリカには報告せず、
秘密にしていたという。
これは、アメリカにおける
研究資金提供の規定に違反する行為となる。
◇ そして中国政府は、
「1,000人計画」を中心にして、
2008年から2020年までに
GDPの15%に相当する2兆ドルを
人材のリクルートのために
支出したとしている。
これは中国政府にとっては、
非常に見返りの大きい計画だった。
アメリカ国民の税金が支出された
研究の成果を中国が獲得し、
自国の軍事と科学技術の発展のために
使うことができるのである。
◇ 報告書では、中国政府は
「1,000人計画」の実態を隠蔽するために、
2018年10月にこの計画にかかわる
すべての情報をネットから削除している。
いまでは、この計画で中国に引き抜かれた
研究員や専門家の名前は分からなくなっている。
◇ そしてこの報告書は、
研究員と専門家の引き抜きにあった
研究所の多くは、エネルギー省が
管轄している機関だとしている。
こうした機関では最先端の
テクノロジーにかかわる
先端的な研究が行われているが、
中国にリクルートされた研究者によっては、
自分がこれらの機関で開発した
テクノロジーの特許を中国の会社名で
登録したケースもあるとしている。
これは米国民の税金の支出で
可能になった研究の特許が、
中国に奪われてしまうという
とんでもないケースだ。
また、中国に帰国する前に
l在籍していた米研究機関から
3万個のファイルをダウンロードして
持ち帰った研究者もいるそうだ。
◇ 一方報告書では、
このようなことが2008年以来
10年以上も続いているにもかかわらず、
人材を引き抜かれた研究機関は
こうした事態に対して反応が非常に鈍く、
特別な対策はないとしている。
◇ これは大学や研究機関だけではなく、
研究資金を提供元である
「全米科学財団」や「国立衛生研究所」、
エネルギー省も同様だ。
それというのも、
研究機関が引き抜きの事実と
それがアメリカにもたらす
危険性について意識し始めたのは、
2018年10月になってからだった。
つづく
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