◇ 厚生労働省は70歳を
超えてからでも年金の受け取りを
開始できるようにする方針だ。
実施時期など具体的な議論は
まだこれからだが、
厚労省は70歳まで遅らせれば
サラリーマンの夫と専業主婦の世帯で、
月 33万円
もらえるとの試算を初めて出した。
ただ、このモデルは
もはや少数派の専業主婦世帯だ。
一方、増加傾向の未婚女性の年金は
その6割と、少なくなっている。
◇ 厚労省が今回公表した
「専業主婦モデル」の試算では、
サラリーマンである夫の給料の
額面平均が、
20~60歳まで 月 42.8万円
60~65歳まで. 35.1万円
65~70歳まで 30.5万円
この金額で働くと想定している。
そして就労中は保険料を
納付し続けることになる。
◇ この前提で70歳から年金を
受け取り始めることにすれば、
65歳から受け取る場合より
月10万円ほど多い 33.1万円 となる。
物価の動向などで
若干変化することはあるが、
60歳までの
平均手取り賃金(34.8万円)の
95%という高水準だ。
◇ 年金制度では専業主婦は
「第3号被保険者」となり、
保険料を納めなくても
老齢基礎年金を受け取れる。
導入された1986年までは
厚生年金の給付は
就業していた夫に対してのみ。
離婚した妻が無年金にならないよう
配慮するための仕組みとして創設されている。
ただサラリーマン夫と専業主婦という
世帯モデルを「標準」とするのは
実態に即していないと見る向きもある。
◇ ニッセイ基礎研究所によると、
専業主婦のいる世帯の割合は、
すでに単身世帯や共働き世帯を下回り、
少数派 といえる。
2026年には単身は4割弱、
共働きは2割となり、
専業主婦世帯は1割を下回ると見込む。
そこでほかのケースも調べてみた。
◇ まずはサラリーマンの男性が
独身のまま過ごす場合だ。
厚労省の専業主婦モデルと同じ賃金で働き、
65歳から年金の受け取りを始めるなら
月 16.4万円
70歳に遅らせた場合は、
月 24万円 となる。
第3号の上乗せがない分、
単身世帯がもらえる年金は
専業主婦のいる世帯より少なくなる。
老後の生活を考える上で注意が必要だ。
◇ 働く女性の単身世帯の
年金額はどうなるか。
男性に比べて収入が少ないケースが多い。
厚労省などの統計データから、
女性が20~60歳まで
月平均29.5万円の給料で働き、
60~65歳まで18.7万円で
働くとした場合、
65歳から年金を受け取ると、
受給額は 月13.4万円 となった。
サラリーマンの夫と専業主婦の
モデルと比べて約6割の水準だ。
単身のうえ給料も低いため、
不動産や金融資産などを
どれだけもっているかによるが、
年金だけでは
この金額で生活するのは相当厳しい。
◇ ただ、65~70歳まで
月17.3万円の収入で働き続け、
年金を受け取り始める年齢も遅らせると、
受給額は 月19.5万円 に増える。
長く働くことがもっとも効果的な対策となる。
◇ 多くの年金を受け取ることになるのは
やはり共働きだ。
例えば妻がフルタイムでなくても
20~60歳まで平均12万円の給料で働き、
その後8.8万円で70歳まで働くとする。
この場合、70歳からの夫婦の年金額は、
専業主婦モデルより4万円あまり多い
37.3万円 となる。
◇ 女性の50歳時の未婚割合は
15年で14.1%と過去最高となった。
国立社会保障・人口問題研究所によると、
高齢女性の単身世帯は
40年に540万世帯となり
15年比で30%近く増える見通し。
世帯構成が変化するなか、
実態と乖離した専業主婦モデルの
情報提供だけでは年金制度への
理解は進まない。
より現実的な絵姿を示す
必要性が高まっている。
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